日本トキシコロジー学会学術年会
第38回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: S4-4
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バイオマーカー
抗甲状腺薬誘発肝障害における血清中オルニチンカルバミルトランスフェラーゼの有用性
*村山 寛池本 正生濱沖 勝
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抄録
【目的】バセドウ病をはじめとする甲状腺疾患において肝機能検査が高値となる例が多い一方で、抗甲状腺薬による重篤な肝障害が報告されている。トランスアミナーゼはどちらの場合にも異常値を示し、これまで両者を鑑別できるマーカーは存在しなかった。今回、血清中オルニチンカルバミルトランスフェラーゼ(OCT)の抗甲状腺薬誘発肝障害における有用性を、動物モデルを用いて検討した。【方法】雄性Wistarラットに甲状腺ホルモンT3(0.1mg/kg)を10日間皮下投与した甲状腺機能亢進症モデル、プロピルチオウラシル(250mg/kg)、あるいはメチマゾール(200mg/kg)を7日間経口投与した薬剤誘発肝障害モデルについて、血清中および肝臓組織中のOCTおよびトランスアミナーゼを測定した。両モデルの肝障害を病理組織検査により評価した。【結果】甲状腺機能亢進症モデルにおいて、血清中トランスアミナーゼは上昇したが、OCTは変動しなかった。肝臓組織中のトランスアミナーゼは有意に上昇しており、血清中濃度と有意な相関が確認された。病理検査では軽度のびまん性過形成が確認された以外に異常はみられなかった。薬剤誘発肝障害モデルにおいては、血清OCTはいずれの薬剤でも2倍以上に有意に上昇したが、血清中トランスアミナーゼはわずかに上昇するか、逆に低下していた。肝臓組織中のトランスアミナーゼは薬剤により変動がみられたが、OCTは変動しなかった。病理検査では、中程度の脂肪変性と部分的な細胞壊死等が確認された。【考察】トランスアミナーゼは甲状腺ホルモン異常や薬剤投与により肝臓組織中濃度が変動し、血清中濃度に影響していた。一方、OCTは甲状腺ホルモン異常や薬剤投与による肝臓組織中の変動がみられず、肝障害時のみ血清中濃度が上昇したことから、薬剤誘発肝臓障害マーカーとして優れていることが示された。
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© 2011 日本毒性学会
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