日本トキシコロジー学会学術年会
第38回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: S5-2
会議情報

毒性オミクス
トキシコゲノミクスデータを用いた肝・腎毒性の安全性バイオマーカー探索
*五十嵐 芳暢山田 弘
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
大規模トキシコゲノミクスデータベースを用いた肝・腎毒性の安全性バイオマーカー探索を主目的とした官民共同のトキシコゲノミクス・インフォマティクスプロジェクトは,これから総まとめの時期を迎える.平成19年度より始まった研究活動の中から,多くのバイオマーカー候補が創出され,プロジェクト内の評価基準に従って評価されてきた.これらバイオマーカー創出のアプローチを大別すると,従来の毒性表現型に基づくものと,既知のメカニズムに基づくものに分けられる.表現型に基づくアプローチとは,従来の毒性表現型を遺伝子によって再定義したものと言い換えられる.メカニズムに基づくアプローチとは,毒性発現メカニズムを遺伝子発現変動との関連で説明し,その中から毒性を特徴付ける変化の組み合わせを絞り込むものと言い換えられる.どちらのアプローチを選択するにしても,バイオマーカーを特定するためのオールマイティな手法は無く,一長一短がある.毒性表現型に基づくアプローチの場合は,毒性試験で得られた病理所見等を基にして評価データを選択し,インフォマティクスにより毒性表現型と相関して変動する遺伝子発現を抽出することになる.当アプローチにおいては,毒性発現と遺伝子発現変動の関連についての説明が比較的容易ではあるが,通常は複数の生体変化が同時並行的に発生するので,目的とする表現型に対応する遺伝子発現変動の絞り込みに工夫が必要となる.メカニズムに基づくアプローチの場合は,毒性発現メカニズムとして解明されたパスウェイに係る遺伝子を設定し,大規模トキシコゲノミクスデータベース情報との照らし合わせにより,パスウェイ上で特徴的に変動する遺伝子発現を特定することになる.当アプローチにおいては,特定した遺伝子の生体反応との関連性を説明することが容易であるが,まだ解明されていないパスウェイ上にある遺伝子発現変化が全く考慮されていない.本講演では,上記のアプローチによるバイオマーカー探索の事例および本プロジェクトで最近取り入れられ始めたトキシコゲノミクスとメタボロミクスを融合したバイオマーカー探索についても紹介する.
著者関連情報
© 2011 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top