抄録
より高感度で迅速な毒性評価を実現するために、まず、定量RT-PCRやマイクロアレイなどの網羅的な遺伝子発現解析技術に、細胞1個あたりのmRNA発現量を絶対量として測定するPercellome手法(特許4415079)を組み合わせた。更に、それを用いての高精度かつ大規模なトキシコゲノミクスデータベースを生成する際に、投与する化学物質の用量と投与後の時間経過を一括して3次元曲面にて評価する方法を採用した。これまでに、100種類超の化学物質についてのマウスにおける生体影響のトランスクリプトームをAffymetrix GeneChip MOE430 2を用いて高精度に測定し、データベース化(Percellomeデータベース)した。
化学物質の毒性評価においては、所見の網羅性(見落としがない事)が要求され、その中では「有意な反応がない」ことも検出しなければならない。この要件を満たしつつマイクロアレイによる大量のデータを高精度かつ効率よく解析するために、独自のマイクロアレイデータ補正技術(特許出願済)や候補遺伝子抽出技術(RSort)、化学物質間での用量・時間を考慮した遺伝子発現反応比較解析ソフトウエア(Percellome Explorer)等を開発した。これらを利用した毒性評価の試験運用を既に開始しており、病理所見を中心とした動物実験では見いだせなかった情報を得つつある。
本発表では、Percellomeデータベースを利用した解析の実際を紹介する。