日本トキシコロジー学会学術年会
第38回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: S6-1
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iPS細胞等多能性幹細胞を用いた創薬支援技術の最新動向
ヒトiPS細胞等多能性幹細胞を利用した創薬支援・毒性検査技術の動向と将来展望
*古川 善規
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抄録

  医薬品の開発には多額のコストと長期の開発期間が必要である。ヒトゲノム配列の解読以降、ゲノム情報を創薬へ応用し、画期的な新薬開発や創薬効率の向上に繋げるべく様々な努力がなされている。しかし、2000年以降、研究費は年々増大するものの、薬事規制当局に承認申請された医薬品の数は日米欧ともに年々減少する傾向にある。その原因は様々であるが、中でも非臨床と臨床のギャップによる臨床試験での成功確率の低さが大きな問題となっている。そこには種差の問題が大きく立ちはだかり、動物試験において有効性や安全性に関する十分な検討を行なったにも関わらず、臨床試験において十分な有効性・安全性が担保出来ず開発が中止されるケースが多々あり、如何にして成功確率を高めることが出来るかが課題の一つである。また、製薬企業にとっては革新的な医薬品を生み出しうる新規の創薬ターゲットを確保し、新たな医薬品を生み出していくことも重要な課題である。
  京都大学/山中教授によって見いだされたiPS細胞は、リプログラム因子の利用により、成人の体細胞から多能性を有する幹細胞を誘導する画期的な技術である。その最大の特徴は由来する細胞のゲノム情報をそのまま利用できる点にある。この特徴を利用し、患者由来のiPS細胞を用いた疾患メカニズムの研究による新規医薬品ターゲット分子の提示や、誘導されたヒトの心筋細胞や肝臓細胞を創薬の早い段階で利用することによって成功確率を高めることなど、創薬支援ツールとして多面的な利用に繋げていくことが大きく期待されている。しかし、誘導された分化細胞をどのように利用していくのか、分化細胞が示す性質が臨床とどの程度相関しているのか、また、既存の評価体系の中でどのように位置付け、より予測性が高く効率的な評価体系へと刷新していくのかなど、実際に創薬支援技術として応用していくためには、解決すべき様々な課題がある。
  本講演では、NEDOで進めているヒトiPS等多能性幹細胞の創薬応用に向けた取り組み事例を中心に紹介をしつつ、当該技術が創薬支援・毒性検査技術をどのように革新していくのか、その将来展望について述べたい。

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© 2011 日本毒性学会
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