抄録
心毒性、特に催不整脈作用が薬物開発の妨げとなっていることは周知の事実である。多くの薬物ターゲットがhERGチャネルであることから、hERGをHEK細胞株に異所性に発現させたhERG/HEK細胞を用いた薬物安全性評価システムなどが利用されている。ところが、一定の割合で偽陽性・偽陰性が起こり薬物安全性評価系のさらなる改善が望まれる。hERG/HEKを用いた薬物安全性評価システムの主な問題点は
(1) 現行のアプローチは、hERGの抑制によるQT間隔の延長をターゲットとしている。ところが、QT間隔を延長しない薬物でも催不整脈作用を有し、またQT間隔の短縮と不整脈発現との関連(QT短縮症候群)も注目されている。臨床では、不整脈発現予測に、TWA(T-wave alternans)、QT dispersion, Tp-Te(Tpeak-Tend)dispersionなど再分極の時間的・空間的バラツキの重要性が指摘されていることから、hERG抑制により生み出される再分極の時間的・空間的バラツキが催不整脈に密接にかかわることが示唆される;
(2) 1990年代にI群薬を使い行われた心筋梗塞後の期外収縮を抑制することによる心臓突然死の予防効果を予測するCAST STUDYが行われた。同研究で、I群薬の催不整脈作用により研究が途中で終了されたことから、再分極に対する作用だけが薬物による催不整脈の原因ではないこと、心臓ストレス環境下で催不整脈作用が増強することがあること;
などが考えられる。そこで、これらを念頭に入れたシステムを開発することにより、薬物安全性評価システムの精度を向上できる可能性がある。そこで、今回は上記の問題点とこれに対して我々が取っているアプローチについて議論する。