日本トキシコロジー学会学術年会
第38回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-7
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17α-ethynylestradiol (EE) の新生児期単回曝露による性周期への影響
*高橋 美和井上 薫林 清吾松尾 沙織里森川 朋美入江 かをる小川 久美子吉田 緑
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抄録
化学物質の臨界期曝露では、条件により成熟期以降に初めて毒性が現れることがあるが、このような遅発性影響の発現機序は不明である。17α-ethynylestradiol (EE) の雌性生殖器に対する遅発性影響を検討するため、以下の研究を行った。【方法】妊娠Wistar Hannoverラット70匹を6群に分け、出産後24時間以内の新生児に17α-ethynylestradiol (EE) 0, 0.02, 0.2, 2, 20, 200 μg/kgを1回皮下投与した。雌児動物について、離乳~5週齢まで膣開口の観察、7週齢より隔週で週5日膣スメアを採取し、各群24匹について10か月齢まで性周期の観察を行った。生後14、21日、5週および10週では性周期を発情期に揃えて一部の動物を途中解剖した。また、投与したEE各用量のin vivoにおけるエストロゲン活性の有無を子宮肥大試験により確認した。【結果】子宮肥大試験では0.02 μg/kgからエストロゲン活性を有することが確認された。膣開口の平均日齢はいずれの群も31日であった。途中解剖における体重、卵巣・子宮重量に群間差は認められなかった。雌性生殖器の組織学的検索では、生後5週までは投与による影響は認められなかったが、10週では高用量群の一部において膣上皮の角化不全がみられた。性周期の観察では、0 μg/kg群は全例4~5日周期で規則的な発情周期を示し、26週齢以降に不規則な性周期を示す個体が数例出現した。一方、200 μg/kg群では10週齢、20 μg/kg群では14週、2 μg/kg群では18週、0.2 μg/kg群では22週より異常な性周期を示す動物が有意に増加した。その多くは持続発情を示し用量依存性に漸増した。【考察】新生児期におけるEE単回曝露は性成熟や卵巣・子宮の発達に影響しないが、性成熟以降に0.2 μg/kg以上で性周期の変調を来すことが明らかとなった。また、用量依存性に発現した遅発性影響量は、in vivoにおいてエストロゲン活性を示す用量に含まれる可能性が示された。
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© 2011 日本毒性学会
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