日本トキシコロジー学会学術年会
第38回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-44
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一般演題 ポスター
(+)-ウスニン酸のラット心臓に及ぼす影響
*横内 友祐今岡 尚子新野 訓代清澤 直樹神藤 敏正三分一所 厚司
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抄録

【目的】(+)-ウスニン酸は地衣類のAlectora、Usnea属等に含まれる成分であり痩身作用があることから、ダイエット用サプリメントの主成分として販売されてきた。近年、劇症肝炎の報告が相次いだため2001年FDAより販売警告が出され、げっ歯類を用いた検討では肝ミトコンドリア毒性を介した障害が惹起される事が判明している。しかしながら他臓器への影響は不明なままであるため、今回我々は(+)-ウスニン酸の心臓に及ぼす影響を検討した。【方法】ウスニン酸の30および100 mg/kg/dayを雌性F344 ラット(7週齢)に経口14日間反復経口投与し、体重、摂餌量および心重量測定、組織学的検査、微細形態学的検査ならびに左心室壁組織を用いた遺伝子発現解析(Affymetrix Rat 230 2.0 GeneChip)を行った。【結果】30 mg/kg/day以上で摂餌量の増加を認めたが体重の変動は認められなかった。心重量は100 mg /kg/dayで増加傾向を示した。組織学的に軽度の心筋細胞筋形質領域拡張を認めたため、ミトコンドリア内膜抗原であるProhibitin抗体を用いて免疫組織化学染色を行なったところ100 mg/kg/dayで染色強度の増加が認められた。電子顕微鏡検査では、100 mg/kg/dayでミトコンドリアの腫大を認めた。遺伝子発現解析では活性酸素分子種産生を示唆する遺伝子群(Sod 1/2, Cat, Gpx 1/3, Mt1a)の顕著な発現レベル増加が観察された。またDNA障害関連遺伝子(Gadd45, Cdkn1a, Ddit3)の発現レベル増加が認められた一方、アポトーシス関連遺伝子(Casp 2/3/6/8/9/12),の遺伝子発現レベルには低下が認められた。【考察】ウスニン酸のラット心臓ミトコンドリアに対する毒性が認められた。過去にラット肝細胞やマウス肝細胞を用いた検討で肝細胞障害に酸化ストレスの影響が示唆されており、ラット心臓に関しても酸化ストレスと、それに伴うDNA障害惹起が示唆され、心筋ミトコンドリア毒性との関連が推察された。

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© 2011 日本毒性学会
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