日本トキシコロジー学会学術年会
第38回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-55
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一般演題 ポスター
メチル水銀による培養ヒト脳微小血管内皮細胞の傷害は低酸素環境で増強される
*廣岡 孝志姫 姝婷山本 千夏安武 章衞藤 光明鍜冶 利幸
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抄録
【目的】メチル水銀中毒による局在的な大脳障害には脳浮腫形成が重要であるとする「浮腫仮説」が提唱されている。しかしながら,脳浮腫に起因した低酸素環境でのメチル水銀の細胞毒性発現は理解されていない。そこで,本研究では,低酸素下における培養ヒト脳微小血管内皮細胞に対するメチル水銀の傷害性を検討した。【方法】ヒト脳微小血管内皮細胞をメチル水銀(1,2,3,5 µM)存在下,37℃,低酸素(1% O2)および通常酸素(20% O2)下で24時間培養し,ギムザ染色後,形態学的観察を行った。別に培地中に逸脱した乳酸脱水素酵素(LDH)の測定,細胞内メチル水銀蓄積量および還元型グルタチオン量を測定した。また,メチル水銀の取込みと排泄に関与するLATおよびMRP,ならびにγ-グルタミルシステイン合成酵素およびメタロチオネインの発現をReal-time RT-PCRおよびWestern blot法により調べた。【結果及び考察】低酸素条件は,メチル水銀の内皮細胞傷害性を増強することが形態学的に観察された。逸脱LDHによる細胞傷害性評価は,この形態学的観察結果と一致していた。細胞内メチル水銀蓄積量は低酸素条件によって有意に増加したが,その取込みに関するLAT mRNAの発現もより低下していた。一方,細胞内グルタチオン量は低酸素条件によって減少したが,メチル水銀の影響を受けなかった。合成律速酵素であるγ-グルタミルシステイン合成酵素の発現変化も認められなかった。メタロチオネインの発現量も低酸素条件により低下していた。以上の結果より,低酸素条件はヒト脳微小血管内皮細胞へのメチル水銀の傷害性を増強し,その機序として細胞内メチル水銀蓄積量の増加ならびにグルタチオンおよびメタロチオネイン発現量の低下が重要であると考えられる。
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© 2011 日本毒性学会
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