日本トキシコロジー学会学術年会
第38回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-58
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一般演題 ポスター
2-エトキシ-2-メチルプロパンのラットへの長期吸入暴露は肝細胞腺腫を誘発する
*齋藤 新西沢 共司笠井 辰也佐々木 俊明高信 健司野口 忠大林 久雄福島 昭治
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抄録
【目的】地球温暖化対策として2-エトキシ-2-メチルプロパン(エチルターシャリーブチルエーテル、ETBE)の本格的なガソリンへの添加にあたり、ETBEの安全性評価の一環として、吸入による2年間のがん原性試験を実施した。
【方法】F344/DuCrlCrljラット雌雄、各群50匹にETBE(99wt%以上)を雌雄とも0(対照群)、500、1500及び5000 ppm(体積比v/v)の濃度で、1日6時間、1週5日間、104週間、全身暴露した。一般状態の観察、体重及び摂餌量の測定、血液学的検査、血液生化学的検査、尿検査、剖検、臓器重量測定及び病理組織学的検査を行った。
【結果】動物の生存率は、雄の5000 ppm群と雌の1500 ppm以上の群で低下がみられた。最終の生存率は、雄では対照群88%に対し、5000 ppm群60%、雌では対照群76%に対し、1500 ppm群、5000 ppm群とも60%であった。雄の5000 ppm群の生存率の低下は、慢性腎症による死亡率の増加によるものと考えられる。
体重は増加抑制が雄の5000 ppm群と雌の1500 ppm以上の群でみられた。最終体重は、対照群に対して雄の5000 ppm群は75%、雌の1500 ppm群は91%、5000 ppm群は78%であった。
腫瘍性病変として、肝細胞腺腫の発生が雄の5000 ppm群で増加した。また、肝臓では好酸性小増殖巣と好塩基性小増殖巣が雄の5000 ppm群で増加した。雌では暴露に関連した腫瘍性病変の発生増加は認められなかった。非腫瘍性病変については、慢性腎症の程度の増強が雌雄の5000 ppm群にみられ、また、腎盂の尿路上皮過形成が雄の1500 ppm以上の群、乳頭部の鉱質沈着が雄の5000 ppm群で増加を示した。
【結論】ラットを用いて、非遺伝毒性物質であるETBE の吸入によるがん原性試験を行った結果、雄に肝細胞腺腫の発生増加が認められたが、雌では腫瘍の発生増加は認められなかった。
本研究は、財団法人石油産業活性化センターが石油連盟から委託された「ETBEの発がん性に係る調査」事業の一環として実施されたものである。
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© 2011 日本毒性学会
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