日本トキシコロジー学会学術年会
第38回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-70
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一般演題 ポスター
多層カーボンナノチューブ腹腔投与マウスにおける急性的酸化ストレス
*高橋 省坂本 義光大山 謙一小縣 昭夫中江 大広瀬 明彦西村 哲司
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抄録
(目的)多層カーボンナノチューブ(MWCNTs)はF344ラット及びp53遺伝子欠損マウスに1回腹腔注射すると中皮腫を発生する。これらの動物は、慢性炎症に伴う腹膜肥厚、腹腔内臓器の癒着、肝臓の変形などが観察される。今回は、初発反応と発癌の関係を知るため、MWCNTs投与直後の酸化ストレス及び急性炎症反応について調べた。
(方法)Crlj:CD(ICR)雌マウスに、1匹当たり0.1 mgのMWCNTsをオリブ油に懸濁して腹腔投与し、経時的にPBS溶液による腹腔洗浄液(PLF)を採取した。チオバルビツール酸反応物(TBARS)をn-ブタノールで抽出後、蛍光光度計にて測定した。Protein carbonylsはジニトロフェニルヒドラジン法で測定した。好中球指標酵素とされるミエロペロキシダーゼ活性(MPO)及び蛋白濃度は定法により測定した。出血の目安としてオキシヘモグロビンの吸光度も測定した。
(結果及び考察)TBARSは1から4日後に高く、2日後が最高濃度であったが、12及び24日後には正常に復した。Protein carbonylsは1から4日後まで最高濃度を示し、12日後は正常に復したが、24日後には再び有意に上昇した。MPOは2及び4日後に最高値を示し、12日以後は正常に復した。蛋白濃度も同様の推移であった。出血も2及び4日後に、多くの個体に観察されたが、24日後にも少数例認められた。なお、追試においてはTBARS濃度は、2日後だけが高く、1及び4日後は対照と同じであった。以上の結果より、急性的酸化ストレス及び急性炎症は、投与後2日目をピークとして、長くても1週間以内の持続に止まり、その後はいったん正常に近い状態に戻るものと考えられた。MWCNTsによる遺伝子傷害の報告があるので、この急性期に中皮細胞等の遺伝子に傷害を与える可能性は高いものと推定される。
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© 2011 日本毒性学会
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