抄録
【背景・目的】細胞毒性型の制癌剤は,作用機序には違いはあるが,がん細胞における細胞分裂抑制を主作用とする.しかしその主作用の延長線上に正常細胞への障害(副作用)がある.これらはいずれも重篤な副作用と言え,癌患者のQOL(Quality of life)を著しく低下させる.しかしながら,それら副作用軽減に関する研究報告は決して多いとは言えない.そして我々は,制癌剤における副作用を簡便に評価することが可能になれば,それら副作用に対処する方法の確立が可能であると考えた.また,このモデルは制癌剤と他の医薬品又はサプリメント等の健康食品との相互作用にも利用出来ると考えられ,様々な利用性を模索出来るモデルではないかと考えた.そして制癌剤5-フルオロウラシル(5-FU)を用いて,その主たる副作用である造血臓器毒性及び消化管毒性評価を中心とし,ラットを用い制癌剤毒性モデル作製の検討を行った.
【方法】8週齢の雄性ラットCrl:CD(SD)に5-フルオロウラシル(5-FU)を30 mg/kg/dayの投与量で7日間強制経口投与した.投与から8日目に病理解剖学的検査(剖検)を実施し,造血臓器毒性及び消化管毒性評価に関連する項目である血液学的検査や病理組織学的検査等を行った.