抄録
非臨床試験から臨床試験への外挿は永遠の課題である。だからこそ、毎年あちこちで外挿性の検討が行われている。しかし、市販後安全性から毒性試験・臨床試験を振り返った検討はあまりみられない。
臨床試験と市販後の間にも壁が存在する。医薬品の安全性情報を提供する添付文書は臨床試験の成績等から作成するが、実際には開発時の非臨床・臨床試験では見られなかったような副作用が数多く市販後に発現する。
昔からある副作用の分類でType AとType Bというものがあり、Type Aは医薬品の薬理作用から予測可能で、開発時から認められることが多い。副作用の全体の8割を占めると言われているが、一般に致死性は低い。これに対してType Bは薬理作用からの推測がむずかしく、致死性も高いと言われている。Type Bの副作用をいかに予測し、対応するかが医薬品のライフサイクルマネジメントのためにも重要な課題となっている。
様々な動物種を用い、毒性所見、薬理作用から薬物動態まで多大なリソースを注ぎ込んで行う非臨床試験。これらを市販後安全性評価における考察に活用できないだろうか。今回、患者背景も治療状況はおろか、副作用の用語はもとより定義等も臨床試験とは異なる市販後安全性評価の現状を共有したい。申請をして承認を取ったら終わりではなく、製品が市場にある限り続く市販後安全性評価に対して、非臨床試験担当者としてどのような寄与が可能なのか。今回の講演が考える糸口となることを期待する。
非臨床開発部門が市販後安全性確保の統括部門としても活動している弊社での事例についても紹介したい。