日本毒性学会学術年会
第39回日本毒性学会学術年会
セッションID: MS1-4
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就職希望の学生を対象とした安全性研究所等の紹介
一般毒性試験
*黒沢 亨
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抄録

医薬品開発のために実施される一般毒性試験とは、医薬品の候補化合物(被験物質という)を哺乳動物に単回または繰り返し(反復)投与し、被験物質の作用によって生じる毒性変化を様々な検査を行い評価する試験である。一般毒性試験で実施する検査には、いわゆる私たちが健康診断の時に実施する臨床検査(体重測定、血液生化学検査、血液学的検査、尿検査、心電図検査、眼検査)と実験動物を用いた試験でしか行えない病理解剖学検査がある。一般毒性試験を実施する目的は、被験物質の持つ作用により生じる変化を用量と時間との関連で把握し、臨床開発段階において治験が行われる際に、ヒトで起こりうる副作用を予測し、それを情報として医師、薬剤師及び被験者へ提供することにより、治験が安全に進められるようにすることにある。したがって、ヒトに初めて投与される前に実施しておくべき重要な試験である。実験動物を用いた一般毒性試験では、臨床検査で認められた変化について、病理解剖学検査により被験物質の標的となる臓器・組織を特定し、その作用を質的に特徴付けることができる点が有用であり、それを正確に評価する事が安全な治験の実施につながる。特に、一般毒性試験で認められた毒性変化が、ヒトに投与される臨床の現場においてモニター可能か否か、回復性のある変化か否かについて考察することが重要である。
 しかしながら、ヒトでの安全性を実験動物を用いた一般毒性試験の結果から予測することは容易ではなく、実験動物とヒトとの反応性の差が大きな障壁となる。そのため、世界的な基準(ICHガイドラインという)により一般毒性試験はげっ歯類(主にラット)と非げっ歯類(主にイヌ又はサル)の2種の実験動物を用いて実施し、被験物質の作用に種差が存在するかを慎重に評価することが要求されている。本演題ではいくつかの被験物質の試験結果を例示し、一般毒性試験の概要を紹介する。

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© 2012 日本毒性学会
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