日本毒性学会学術年会
第39回日本毒性学会学術年会
セッションID: O-18
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内分泌攪乱化学物質、生殖毒性、毒性発現機構
ラット胎盤発生に対するシスプラチンの影響
*古川 賢林 清吾臼田 浩二阿部 正義萩尾 宗一郎小川 いづみ
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抄録
【目的】白金抗がん剤であるシスプラチンのラット胎盤発生に対する影響を経時的に検索した。【材料及び方法】試験にはWistar Hannover妊娠ラット52匹を供試した。シスプラチンは生理食塩水に溶解し、0及び2 mg/kgの用量にて妊娠11及び12日(11・12日投与群)並びに妊娠13及び14日(13・14日投与群)に腹腔内投与した。妊娠13、15、17及び21日に剖検を実施し、胎盤及び胚子/胎児を摘出し、重量測定後、胎盤の病理組織検査を実施した。【結果】11・12日投与群では、胎児死亡率は妊娠17日以降約65%まで上昇し、胎児重量は妊娠21日で減少した。胎盤重量は妊娠15日以降減少し、妊娠21日では肉眼的に小胎盤(対対照群重量比43%)を示した。13・14日投与群では、胎盤重量は11・12日投与群と同様、妊娠15日以降減少し、妊娠21日では小胎盤(対対照群重量比60%)を示したが、胎児死亡率、胎児重量には著変は認められなかった。病理組織学的には11・12日投与群では、アポトーシス増加が迷路層において妊娠13、15及び17日、基底層においては試験期間を通して認められた。細胞増殖活性低下は迷路層及び基底層において妊娠13日で認められ、両層は低形成を示した。さらに、基底層ではアポトーシスによるグリコーゲン細胞の減少が妊娠15及び17日で認められ、これによりグリコーゲン細胞の間膜腺間質への浸潤が抑制され、間膜腺は低形成を示した。13・14日投与群では、アポトーシス増加が迷路層において妊娠15及び17日、基底層において妊娠21日で認められ、迷路層は低形成を示した。一方、基底層及び間膜腺では著変は認められなかった。【結論】シスプラチンを妊娠11、12日に投与することにより迷路層と基底層は低形成となり、小胎盤が誘発された。間膜腺も低形成を示したが、これはグリコーゲン細胞の減少に起因した二次的変化と考えられた。一方、妊娠13、14日投与では迷路層は低形成を示したが、基底層には著変は認められず、基底層の感受期は迷路層よりも短いと考えられた。さらに、胎盤重量が約60%まで減少しても、正常な胎児発育は維持されることが明らかとなった。
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© 2012 日本毒性学会
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