日本毒性学会学術年会
第39回日本毒性学会学術年会
セッションID: O-48
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毒性関連遺伝子、 酸化ストレス、発がん
シスプラチン誘発急性腎障害に対する新規選択的γ-glutamyl transpeptidase阻害薬GGsTopTMの軽減効果
*河合 悦子新 範之渡辺 文太平竹 潤松村 靖夫大野 行弘
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抄録
【目的】γ-glutamyl transpeptidase(GGT)はグルタチオン(GSH)やGSH抱合体の代謝の第一段階を担う酵素である。このGGTを介した代謝経路で生成されたシスプラチンの活性代謝産物が腎障害を誘発するとの考えがある。そこで、新規に開発され従来の阻害薬に比べてGGTに対する選択性が高く、毒性の少ない阻害薬GGsTopTMのシスプラチン腎障害に対する保護作用について検討した。
【方法】SD系雄性ラットにシスプラチン(6 mg/kg, i.v.)を投与し、GGsTopTM (10 mg/kg, i.v.)はシスプラチン投与30分前に投与した。 シスプラチン投与1,2,3日後にGGT活性および腎障害の指標として血漿クレアチニン、BUNやN-acetyl-β-D-glucosaminidase (NAG)の尿中への排泄量を測定した。また活性酸素産生は腎凍結切片を用いてジヒドロエチジウム(DHE)染色により、腎組織学的変化はPAS染色にてそれぞれ観察した。
【結果】投与3日後においてシスプラチンは血漿クレアチニン、BUNおよびNAGの尿中への排泄量をそれぞれ有意に増大させ、尿細管拡張などの組織学的変化をもたらした。腎障害に先駆けてシスプラチン投与2日後よりDHEの蛍光強度増大がみられ、活性酸素産生増大が確認された。シスプラチンは腎GGT活性には影響を及ぼさなかった。GGsTopTMはこれらのシスプラチンによる活性酸素産生増大、腎障害や組織学的変化のいずれに対しても抑制効果を示した。
【考察】選択的GGT阻害薬GGsTopTMは、シスプラチンによる活性酸素産生増大を抑制することで腎障害を軽減させたと考えられる。このシスプラチンによる活性酸素産生増大にGGTが関与していることが明らかとなった。
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© 2012 日本毒性学会
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