日本毒性学会学術年会
第39回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-12
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低濃度IL-1s刺激がCYP7A1遺伝子発現に及ぼす影響
*田中 匠関本 征史大井 一樹山田 景太小島 美咲出川 雅邦
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抄録
【目的】IL-1s(IL-1α、IL-1β)は転写因子NF-κBの活性化を介して肝コレステロール異化酵素(CYP7A1)遺伝子発現を抑制し、血清コレステロール量を増加させることが報告されてきた。しかし、最近我々は、性成熟した雌雄マウスでの構成的な肝IL-1s量と肝CYP7A1の遺伝子発現量との間に正の相関があることを見出し、IL-1sはその発現量によりCYP7A1発現に対して相反する作用を有することを示唆した。そこで、本研究では、IL-1s量とCYP7A1遺伝子発現量との関連性をヒト肝がん由来HepG2細胞を用いて追究した。
【方法】HepG2細胞にNF-κB活性化測定用レポータープラスミドを一過的に導入し、IL-1α(0.32~10 U/ml)、IL-1β(0.625~20 U/ml)をそれぞれ24時間処理した。各細胞におけるNF-κBの活性化をルシフェラーゼアッセイにより、また、CYP7A1タンパク質の発現をウェスタンブロッティングによりそれぞれ解析した。さらに、種々濃度のIL-1sを処理したHepG2細胞でのCYP7A1、およびその発現制御分子(PGC-1α、SRC-1、SHP-1、LXRα、HNF4α)の遺伝子発現量をリアルタイムRT-PCR法により測定した。
【結果】NF-κBは、IL-1αおよびIL-1βのいずれの添加でも濃度依存的に活性化された。一方、CYP7A1遺伝子やCYP7A1蛋白質の発現量は、低濃度のIL-1α(1.25 U/ml)やIL-1β(5 U/ml)処理により誘導され、高濃度域(IL-1α, > 10 U/ml ; IL-1β, > 10 U/ml)ではその誘導効果は低下・消失することが明らかになった。また、IL-1sに対する発現応答性がCYP7A1遺伝子と類似している発現制御分子遺伝子として、PGC-1α遺伝子、HNF-4α遺伝子、SRC-1遺伝子が見出された。
【考察】IL-1sはCYP7A1遺伝子発現に対して、低濃度では誘導、高濃度では抑制(誘導効果の消失)といった作用を示すことが明らかとなり、IL-1sによるCYP7A1遺伝子発現誘導における閾値の存在が示唆された。また、その発現変動には転写共役因子であるPGC-1αなどの発現変動が関与している可能性が考えられた。
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© 2012 日本毒性学会
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