日本毒性学会学術年会
第39回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-120
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グリシドール及びグリシドール脂肪酸エステルによるラット乳腺腫瘍発生修飾作用の検討
*曺 永晩水田 保子豊田 武士大波 冴子小川 久美子
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抄録

【目的】グリシドール脂肪酸エステル(GEs)は、食用油の精製・脱臭過程で形成される副産物であるが、その毒性や体内動態は明確ではなく、生体内で加水分解され、発がん性が懸念されるグリシドールに変換される可能性がある。ジアシルグリセロール(DAG)を主成分とする食用油にGEsが含まれていることが知られているが、GEsの安全性や生体への影響を検討した報告はほとんどない。一方、その加水分解産物であるグリシドールは遺伝毒性発癌物質でラット及びマウスで雌の乳腺腫瘍の発生増加が報告されている。本研究ではグリシドールオレイン酸エステル(GOE)およびグリシドールリノール酸エステル(GLE)について、N-methyl-N-nitrosourea(MNU)誘発ラット乳腺腫瘍発生における修飾作用の有無を検討した。【方法】7週齢のSD系雌ラットにMNUを50mg/kgを一回i.p.投与した後、グリシドールは800ppmで、GOEおよびGLEは同モル数の3600ppmで26週間飲水投与した。更に無処置群及び溶媒であるTween80(300ppm)投与群を設けた。触診により腫瘍の発生状況を継時的に観察し、投与終了後は病理組織検査を行った。【結果】グリシドール投与群では溶媒対照群に比べ飲水量の著しい減少及び体重増加抑制がみられた。触診可能な腫瘍の発生率、発生数及び体積において、グリシドール投与群では有意な増加あるいは増加傾向が認められた。また、GOE投与群では軽度の増加傾向がみられたが、GLE投与群では何れの変化も認めなかった。【結論】グリシドールの強い乳腺腫瘍発生促進作用が示唆された。GOE及びGLEに関しては現在作製中の乳腺部結節を病理組織学的に検討し、最終評価を行う。

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© 2012 日本毒性学会
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