日本毒性学会学術年会
第39回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-19
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ヒト腎障害バイオマーカー尿中L-FABPは毒性試験に応用できる
*鈴木 慶幸星合 清隆高尾 みゆき秋江 靖樹門田 利人及川 剛田口 景子筑广 紗弥香菅谷 健吉田 啓造齋藤 明美
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抄録
【目的】尿中のL-type Fatty Acid Binding Protein(L-FABP)は,腎微小循環障害を反映する虚血・酸化ストレスマーカーであり,本邦ではすでに体外診断薬の承認を取得し、2011年には尿細管機能障害を伴う腎疾患の診断を目的として保険収載されている.毒性試験においては腎毒性の指標としてBUN及び血清クレアチニン(sCr)値がよく利用されるが,より感度の高いバイオマーカー(BM)が望まれている。今回,ラット及びイヌの腎障害モデルを用いて,尿中L-FABPが毒性試験に応用可能であるかを検証した.
【方法】ラット腎障害モデルとして,雄Wistarラットにシスプラチン(CDDP)を投与し,経時的に尿採取及び頚静脈より採血を行い,尿中L-FABP,尿中酵素活性,BUN,sCr及び病理組織学的検査を行なった.イヌ腎障害モデルとして,2腎1クリップ(2K1C)腎性高血圧モデル及び房室ブロック(AV-B)モデルを用いて,増感型ELISA法により尿中L-FABPを測定した.
【結果】CDDP誘発ラット腎障害モデルにおいて,尿中L-FABP値は投与後24時間から上昇傾向にあり,投与後72時間に最大値を示した.尿中酵素活性の変動もほぼ同様に投与後72時間に最大値を示した.投与前と投与後72時間での変動率はBUN及びsCrは約2倍であったのに対し,尿中酵素活性は約6倍,尿中L-FABPは約30倍であった.イヌ2K1Cモデルでは,術後1日目から尿中L-FABPは上昇し,2日目に最大値を検出し,3日目には術前の値まで低下した.AV-Bモデルでは,尿中L-FABPが高値な個体が7例中2例で認められた.
以上のラット及びイヌの腎障害モデルにおいて,腎臓の障害度に依存した尿中L-FABPの上昇が認められた。前臨床向けに安全性予測試験コンソーシアムが提唱する7種の腎BMは、ヒト腎障害への外挿性という観点から再評価が必要とされる。今後、臨床BMとして確立された尿中L-FABPが、他の動物種や系統を用いた腎障害モデルにおいても有用かどうかさらに検討する予定である.
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© 2012 日本毒性学会
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