日本毒性学会学術年会
第39回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-201
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ミトコンドリア機能評価に着目したin vitro肝毒性評価系の検討
*川瀧 拓山本 敏誠松岡 奈央子和崎 正彦
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抄録
【目的】肝毒性は医薬品開発中止の主要な要因であり,また,ミトコンドリア機能傷害は肝毒性発現メカニズムの一因である.今回,HepG2細胞を用いた2種類のミトコンドリア機能評価系の有用性を既知化合物を用いて検証した.
【方法】培地中のグルコース(Glc)をガラクトース(Gal)に代替することで,解糖系からのエネルギー供給が遮断され,ミトコンドリア障害性を有する化合物では細胞毒性が増強する.その性質を利用して,化合物による細胞毒性を,Glc又はGal培地(Glc/Gal)を用いて評価した.更にミトコンドリア呼吸鎖に関連したパラメーターを測定できる細胞外フラックスアナライザー(XF24,SeahorseBioscience)を用いて,化合物による酸素消費量(OCR)及び酸性化速度(ECAR)への影響を評価した.
【結果および考察】Rotenoneなどミトコンドリアに障害を示す化合物では,Gal培地において呼吸鎖阻害によりATP供給が遮断されるために,より低濃度から細胞毒性を発現したが,ミトコンドリアに障害を示さないcytochalasin Dでは両培地間で細胞毒性に違いは認められなかった.一方,XF24では,Rotenone処理によりOCRが減少し,逆に,ECARが上昇した.呼吸鎖阻害により電子伝達系の酸素消費が抑制されたためOCRが減少し,一方,代謝が呼吸鎖から解糖系にシフトしたことで乳酸産生量が増加しECARが上昇したと推定された.Glc/Gal培地を用いた細胞毒性の評価系は簡便かつスループットと再現性も良好であり,一方,XF24はミトコンドリア毒性の発現メカニズムを詳細に解析可能であった.
【まとめ】以上,両評価系はミトコンドリア機能を評価する際に有用なツールであり,また両評価系を組み合わせることで,ミトコンドリア機能を傷害する化合物を効果的にスクリーニング可能と考えられる.
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© 2012 日本毒性学会
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