抄録
【目的】Reactive oxygen species(ROS)アッセイは,化学物質に光照射を行い,singlet oxygen (SO)とsuperoxide anion (SA)の生成を調べる光化学的特性試験の一つである.現在,ROSアッセイの有用性について,多施設バリデーションがJapanese Center for the Validation of Alternative Methods (JaCVAM)において実施されている.プレバリデーションの結果,陽性対照物質quinineでは,濃度依存的にSOが増加するのに対し,既知光毒性物質のchlorpromazine (CPZ)では濃度に逆比例して減少することが判明した.我々は,その原因を明らかにするため,光照射前後のCPZ含有反応液の解析を行った.
【方法】96ウェルプレートに入れたCPZ(20及び200 µM)を含む反応液を,擬似太陽光照射装置中で1時間照射し,p-nitrsodimethyl aniline 法によりSO産生量を測定した.また,光照射前後の反応液について250~700 nmの吸光スペクトルを測定するとともに,HPLCを用いて反応液を解析した.
【結果/考察】その結果,CPZ含有反応液では,光照射後に吸収波長のベースラインの上昇が認められ,その上昇は200 µMの方が20 µMより顕著であった.さらに,これらのサンプルをHPLC分析した結果,光照射したサンプルでは,分解されたCPZのピークがブロードに認められた.従って,CPZのSO値が用量に逆比例した原因は,光照射によって生じたCPZ分解産物が測定波長に影響したためと推定された.以上のことから,化学物質のSO生成を評価する際には,光分解物による影響を考慮する必要があると考えられた.