抄録
【目的】私達は、これまでの本学術集会において、NIBS系あるいはGottingen系ミニブタを用いた各種外用剤の背部皮膚における皮膚刺激性の検討を行い、ミニブタはヒトの反応性と近似しているという有用性について報告した。しかし、ヒトでの外用剤の適用部位は、手、足、腹あるいは背などと異なり、適用部位によって効果や刺激性には大きな差がある。従って、非臨床試験での背部皮膚を用いた皮膚刺激性の結果が生体全体の反応性を示すものではないと考え、今回、Gottingen系ミニブタを用いて各投与部位(額部、頬部、鼻部、頚部、背部及び脇腹)における皮膚刺激性の差について検討を行った。【方法】Gottingen系ミニブタ(各n=3)の各投与部位に白色ワセリン、5及び20%ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)を24時間閉塞投与し、投与後24、48及び72時間にDraize et al.の基準に従い皮膚反応を観察した。観察終了後、各投与部位について病理組織学的検査を実施した。【結果】5及び20% SLSともに、背部皮膚と比べて、他の投与部位の皮膚一次刺激指数(P.I.I.)は高値を示した。その程度は、概ね頚部・額部、次いで鼻部・頬部・脇腹の順であった。また、病理組織学的検査でも20% SLSにおいて、背部皮膚を除く各投与部位で痂皮形成、潰瘍等が認められ、背部皮膚より強い所見が認められた。白色ワセリンでは、各投与部位とも皮膚反応はみられず、病理組織学的変化でも変化は認められなかった。【まとめ】一般的に皮膚刺激性試験の投与部位は、背部皮膚が用いられるが、今回の検討により、頚部、額部、脇腹、鼻部及び頬部の刺激に対する反応性は、背部皮膚と比べて高いことが確認できた。その中で、鼻部及び頬部は投与手技上の問題もみられた。これらの結果から、鼻部及び頬部を除く額部、頚部、脇腹は、従来の背部皮膚に替わる投与部位として、選択可能であることが確認されると共に、非臨床試験における皮膚刺激性試験は臨床での適用部位に応じた評価が適切と思われた。