抄録
目的:皮下投与による刺激性の評価には、ウサギあるいはげっ歯類が用いられることが多い。しかし、臨床上、脂肪組織を多く含むヒトの腹部皮下を投与部位とする場合、これらの動物種の皮下組織は脂肪組織が少ないため、刺激性の評価に適さない場合が考えられる。そこで、各種実験動物の皮下組織の構造を比較検討し、その中でもヒトの腹部皮下組織と構造的に類似性の高いミニブタを用いて、酢酸の皮下投与による局所刺激性を検討した。
方法:(1) 10種類の実験動物の皮膚の病理組織標本を作製した。(2) ミニブタの皮下投与を「注射剤の局所刺激性に関する試験法改正案」を参考に実施した。生理食塩液、0.425%酢酸、1.7%酢酸の0.1 mLあるいは1 mLを、ミニブタ (Göttingen) の頸部、背部及び鼠径部に皮下投与した。投与後2日及び14日に投与部位皮膚を採取し、病理組織学的検査を行った。
結果: (1) ミニブタの皮下組織は脂肪組織を多く含み、その構造はヒトとの類似性が高かった。(2) ミニブタの皮下投与において、酢酸投与後2日では、頸部、背部及び鼠径部ともに出血、脂肪細胞壊死及び炎症性細胞浸潤が認められた。酢酸投与後14日では、頸部、背部及び鼠径部ともに出血、脂肪細胞壊死及び肉芽組織の形成が認められた。また、これらの組織変化の程度は、酢酸の投与液量及び濃度に依存していた。
結論: ミニブタでの皮下投与は、ヒトの皮下組織に類似する組織での局所刺激性の評価を可能とするものと考えられる。