日本毒性学会学術年会
第39回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-220
会議情報

ポスター
サリドマイドにより催奇形性を示すヒト型CYP3Aクラスター保持マウス
*香月 康宏小林 カオル大島 毅墳崎 靖子千田 直人秋田 正治鎌滝 哲也阿部 智志久保 欣也千葉 寛押村 光雄
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

市販薬の約50%を代謝する薬物代謝酵素cytochrome P450 3A (CYP3A) は主に肝と小腸に発現しており、経口投与された薬物の血中濃度の制御に重要な役割を果たしている。しかしながら、CYP3Aの特性は動物とヒトで異なるため、ヒトにおけるバイオアベイラビリティや薬物相互作用を動物実験から予測するには限界がある。本研究において、我々がこれまでに開発したヒト人工染色体(HAC)ベクターシステムを用いて、ヒトCYP3A遺伝子クラスター(CYP3A4, CYP3A43, CYP3A5, CYP3A7)およびその制御領域を含む約700kbをHACベクターにクローニングし、CYP3A-HACベクターを導入したマウスを作製した。また、完全なCYP3Aヒト化マウスを作製するために、マウスの内在性Cyp3a遺伝子クラスターが破壊されたマウス(Cyp3a-KOマウス)を作製し、CYP3A-HAC/Cyp3a-KOマウスを作製した。このマウスでは、ヒトと同様に肝臓と小腸にCYP3A4の発現が組織特異的に認められ、さらに成体期特異的に発現するCYP3A4は成体期に、胎仔期特異的に発現するCYP3A7は胎仔期にそれぞれ発現し、CYP3A分子種の時期特異的な発現も再現された。また、CYP3A-HAC/Cyp3a-KOマウスにおいてトリアゾラム代謝の動態、CYP3Aを介した不可逆的阻害、およびDHEAの胎児期特異的代謝物について調べたところ、ヒト型化されていることが示された。さらに、胎仔培養システムにおいて、胎仔培養液中にサリドマイドを添加し、11.5日胚の胎仔を24時間培養したところ、サリドマイドを投与したCYP3A-HAC/Cyp3a-KOマウス群においてのみ21例中9例(42.9%)において、四肢の奇形が優位に観察された。従って、CYP3A-HAC/Cyp3a-KOマウスはCYP3Aにより代謝される薬物評価や催奇形性評価に利用できることが示唆された。

著者関連情報
© 2012 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top