日本毒性学会学術年会
第39回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-30
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気管内投与による結晶質シリカのウサギ肺への影響
*橋爪 昌美大神 明楯 美樹石井 雅己高橋 響榎本 眞小林 素秋森本 泰夫
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抄録
【目的】珪肺症は結晶質シリカの粉じんの吸入により起こり, 肺胞蛋白症(急性)や線維性瘢痕病変(慢性)が観察される。ラットでは発癌性も指摘されている。今回, ウサギに結晶質シリカを気管内に単回投与し, 肺への経時的影響を検討した。
【方法】2 mLの生理食塩液に懸濁した結晶質シリカ(平均粒径1.6μm)50 mgをJW雄ウサギ(平均体重:1.8 kg)の気管内に投与し, 投与後3日, 3ヶ月, 6ヶ月に投与群と対照群各3例を解剖して病変を検索した。組織マイクロアレイ標本も作製し, HE染色に加え, 特染(PAS, Masson trichrome, EVG)や免疫染色(RAM11, MAC387, IL-1β, IL-6, TNF-α)を行った。
【結果および考察】投与後3日では, 肺野全体にシリカ粒子を貪食した肺胞マクロファージや多形核白血球が出現した。呼吸細気管支周囲には小型の珪肺結節が形成され, 結節の外縁には肺胞上皮が増生した。投与後3ヶ月では, 肺胞内に蛋白様物質(PAS陽性)の貯留, 結節内の線維芽細胞出現、石灰化巣(一部)や結節の融合などを認めた。結節周囲のリンパ球出現, 結節内と肺胞内のマクロファージ, 多形核白血球の増加傾向も観察された。 投与後6ヶ月では, 肺胞内の蛋白様物質の減少, 結節融合の進行, 線維芽細胞の増生増加が示され, マクロファージ, 多形核白血球の浸潤, リンパ球出現もさらに目立った。以上の所見から, シリカ粒子は先ず肺胞内マクロファージに貪食されるが, マクロファージの死滅に伴い肺胞内や間質に再放出されること, 肺胞Ⅱ型上皮細胞の産生する肺サーファクタントなども加わった蛋白様物質が結節性病変を招くことが推察され, 免疫染色などによる裏付けを行った。なお、結節は時間の経過とともに融合・大型化し, 投与後6ヶ月には肺胞上皮増生や炎症細胞浸潤も加わって特徴的な形態を示す線維性瘢痕が形成されることを確認した。
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© 2012 日本毒性学会
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