日本毒性学会学術年会
第39回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-62
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ポスター
亜ヒ酸のNK細胞活性化に対する免疫毒性作用
*角 大悟原田 久美小川 智子津山 博匡姫野 誠一郎
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抄録
【目的】東アジア地域では慢性的なヒ素曝露が原因で多臓器において癌が発生するが、 腫瘍免疫に関わるナチュラルキラー(NK)細胞の機能がヒ素により影響を受けるかについてはほとんど検討されていない. NK細胞はT細胞から放出されるIL-2やIL-12に応答してサイトカインを産生し, また, NKp46などの受容体発現を上昇させることで癌細胞に特異的に結合し、 GranzymeB/Perforinシステムを用いて攻撃する. 本研究では, ヒ素化合物がIL-2およびIL-12によるNK細胞の活性化に影響を与えるかについて検討した.【方法】細胞:ヒトナチュラルキラーNK92細胞を用いた. サイトカイン発現: FlowCytomixおよびELISA法で解析した. mRNA発現: Real-timeRT-PCR法で検討した. 受容体の細胞表面発現: フローサイトメトリー法で検討した.【結果】 NK細胞にIL-2, IL-12を共添加した12時間後の培地中のサイトカインを測定したところ, IFN-γ, IL-10, IL-6, TNF-βの分泌量が著しく増加した。このようなNK92細胞のサイトカイン分泌能に対して亜ヒ酸は有意にその分泌能を抑制した. さらに, 癌細胞を特異的に認識する受容体NKp46およびGranzymeB/Perforinの発現を検討したところ, IL-2添加によるNKp46およびGranzymeBの発現上昇に対し亜ヒ酸は有意に抑制したが, Perforinの発現には影響を与えなかった。以上の結果より, NK92細胞を亜ヒ酸に曝露すると, IL-2やIL-12によるサイトカイン, 受容体の発現およびGranzymeBの発現上昇を抑制することが明らかとなった. 今後は, 亜ヒ酸によるNK細胞の癌細胞に対する攻撃能への影響, および抑制機序に関わる因子の探索を進めて行きたい.
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© 2012 日本毒性学会
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