日本毒性学会学術年会
第39回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-63
会議情報

ポスター
トリクロロエチレンによるT細胞増殖亢進作用に関する検討
小林 亮*中西 剛永瀬 久光
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【目的】近年、環境化学物質がアレルギー疾患の増悪化に関与する可能性が指摘されているが、我々はこれまでに地下水汚染で問題となっているトリクロロエチレン(TCE)が、in vivo能動皮膚アナフィラキシー反応を増悪するのみならず、抗原特異的リンパ細胞増殖も亢進することを報告してきた。今回はTCEによる抗原特異的なT細胞増殖亢進作用のメカニズムを詳細に検討するために、in vitroにおいてリンパ細胞に対してTCEを直接的に作用させることで、TCEがT細胞サブタイプ(CD4+およびCD8+陽性T細胞)の増殖に及ぼす影響について検討を行った。
【方法】CD4+およびCD8+ T細胞は、BALB/cマウスの脾臓およびリンパ節からリンパ細胞を得た後、磁気標識ビーズで単離した。得られた各細胞を抗CD3抗体で刺激すると同時にTCEを細胞に添加し、[3H]チミジンの取り込みを指標としてT細胞増殖に対する影響を評価した。またT細胞受容体(TCR)シグナル伝達に対するTCEの影響を検討するために、抗CD3抗体刺激+TCE処理24時間後の細胞よりタンパク質を回収し、シグナル伝達に関わる分子のリン酸化状態をウエスタンブロットにより検出した。
【結果及び考察】TCE 10-9 M以上の処理で、in vitroにおいてもTCR依存的なT細胞増殖を促進したことから、TCEはT細胞に直接作用することが示された。またCD8+ T細胞においては顕著な細胞増殖亢進が認められ、CD4+ T細胞においても細胞増殖亢進が認められたが、CD8+ T細胞と比較するとその影響はわずかであった。さらにCD4およびCD8と相互作用するTCRシグナル伝達分子であるLckのリン酸化状態が、CD4+ T細胞よりもCD8+ T細胞で大きく上昇していた。以上のことからTCEはCD8+ T細胞に対してLckのリン酸化亢進を介して細胞増殖亢進作用を示すことが示唆された。
著者関連情報
© 2012 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top