抄録
非臨床試験から得られる安全性情報が臨床副作用とどの程度相関しているかを知ることは今後の医薬品開発に有益である。そこで、市販されている医薬品の臨床所見と非臨床所見の相関性を調査し、発現頻度別副作用の特徴を明らかにした。
【方法】平成13~22年までに承認された新有効成分含有医薬品234剤のうち、抗腫瘍薬及びワクチン剤等を除く薬剤を対象に、5%以上の臨床副作用と非臨床毒性所見の関連性について調査した。臨床副作用は添付文書から抽出し、それぞれの副作用に対応する非臨床所見の有無を承認申請資料及び審査報告書から確認した。臨床副作用の発現頻度を①5~10%未満、②10~20%未満、③20~30%未満、④30~40%未満、⑤40~50%未満及び⑥50%以上の6つの頻度領域別に解析を行った。
【結果】全副作用の頻度別件数は、①から⑥の順に671、313、88、57、18及び52件であった。全副作用の8割は頻度20%未満であったが、⑥の高頻度のものが4%を占めていた。副作用の相関性は①から⑤までは低頻度よりも高頻度の副作用で良い傾向が認められたが、⑥の副作用中約4割は予測不可能であった(頭痛、倦怠感及び発熱)。各発現頻度の副作用を発現臓器別に分類した結果、高発現頻度では、血液、全身と中枢神経系の副作用が多い傾向にあった。重大な副作用は56件で、約8割は20%未満の発現頻度で大部分は予測可能であったが、重大な副作用件数の16%(9件)が予測不可能であり、頻度10%未満であった。
【結論】全体の約8割の副作用の発現頻度は20%未満であり、50%以上のものは約4%程度と少なかった。低頻度よりも高頻度の副作用が良好な相関性を示す傾向ではあったが、50%以上の高発現頻度の副作用のうち約4割が予測できなかったたことは、今後の課題と考えられる。