ゲノム科学は構造解析から機能解明へ展開し、マウスにおいてはゲノム機能解明の手段としてENUミュータジェネシスを皮切りに大規模突然変異マウスの作製プロジェクトが開始された。すなわち、欧米を中心に全遺伝子の機能欠損(ノックアウトマウス)作製プロジェクト(KOMP、EuCOMM)が推進され、マウス全遺伝子のES細胞の樹立はほぼ完了し、今後はマウス個体作製とその表現型レベルでの網羅的な解析の国際的な連携プロジェクトが展開されようとしている。我々は、理研GSC ENUマウスミュータジェネシスプロジェクトの成果を受けて、理研バイオリソースセンターにて「日本マウスクリニック」(http://mouseclinic.brc.riken.jp/ )を設立し、網羅的な表現型解析プラットフォームとその実験プロトコルの整備(SOP)、正確なデータ記述法と統計解析システムの開発等より広範囲で詳細なマウス表現型解析システムを構築した。そして国内外の研究者が開発した遺伝子改変マウスを中心に網羅的な表現型解析を実施し、ヒト疾患モデルとしてのアノテーション、さらに、セマンティックWeb技術に基づくマウス表現型情報を扱うための技術基盤開発などを行っている。本シンポジウムでは日本マウスクリニックのシステムの紹介と、昨年開始された国際マウス表現型解析プロジェクトIMPC (International Mouse Phenotyping Consortium)について説明し、マウス表現型解析の国際標準化の潮流について概説する。