日本毒性学会学術年会
第39回日本毒性学会学術年会
セッションID: S6-1
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神経行動毒性試験の標準化と新たな指標開発の展開
OECDテストガイドラインの現状と今後の課題
*宮川 宗之
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抄録
化学物質が神経系に及ぼす影響を実験動物やヒトの行動を指標に用いて評価しようという試みは広く行われており、OECDのテストガイドラインでも種々の行動試験が紹介されている。「詳細な行動観察」や「活動性の測定」などは一般毒性試験の一部として(神経毒性をスクリーニングする目的で)実施されており、スクリーニングで影響が認められた場合は詳細な神経毒性の評価が必要と考えられている。神経毒性、発達神経毒性、生殖毒性に関するテストガイドラインでは、神経系の「機能的変化」を把握することも必要とされることから、OECDは神経毒性と生殖毒性試験に関するガイダンス文書を用意し、オペラント条件づけの応用等、様々な認知機能影響の検査課題を解説している。
 しかしながら、認知や情動に係わる試験では数種類の迷路学習のみが汎用されている現状があり、オペラントチャンバーを用いた認知機能の評価は滅多に実施されず、情動性の評価ではオープンフィールド試験と高架式十字迷路課題以外が利用されることは殆どない。医薬品の安全性試験では、一定の範囲で有害性が認められないことが確認されていれば目的は達成されるかもしれないが、例えば環境保健分野では子どもの知能や衝動性等の情動面の発達障害が問題となることもあり、社会的に問題となった化学物質については、ヒトにおける影響を適切に反映し得るかどうかといった点に配慮しつつ、神経系高次機能に対する影響を動物実験によって詳細に評価することも求められる。
 上記の観点からOECDのガイダンス文書で紹介されている行動試験について概観するとともに、認知機能や情動性の評価における問題点を指摘し、機能的変化に関わるデータをどの様に毒性情報として利用するかについて基本的な考えを述べる。行動分析や行動薬理で使用されてきた手法のみならず、行動遺伝学やエソロジーを背景とした試験法導入の必要性にも言及したい。
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© 2012 日本毒性学会
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