抄録
我々は,樹状細胞の活性化に着目したin vitro皮膚感作性試験human Cell Line Activation Test (h-CLAT)を開発してきた。これまでの検討で,106品の化学物質をh-CLATで評価した結果,動物試験(LLNA)との一致率は82%1)と良好な予測性を得られた。しかしながら,一部の難水溶性の感作性物質では,培地中で油滴や析出が生じ,偽陰性として評価されることが判明した。そこで,本研究では,比較的高いLog Kowを有した化学物質を数多く含む,37品の化学物質のh-CLATによる評価を行った。その結果,9品の感作性物質が偽陰性として判定され,これらのLog Kowは全て3.5以上であった。また,既に発表済みの106品のデータセットと合わせた143品のh-CLATのデータセットにおいて,LLNAに対するh-CLATの一致率および感度は,それぞれ80%,83%であった。また,Log Kowが3.5以下の化学物質112品における一致率および感度は,それぞれ88%,94%へ向上した。さらに,Log Kowが3.5以上の化学物質に関しても,陽性検出率が88%と高かった。そこで,Log Kowが3.5以上で,かつ,陽性と判断された化学物質の評価結果も採用とした結果,適用できる化学物質は112品から128品へと増加し,一致率と感度はそれぞれ88%と95%まで向上することが判明した。以上より,高いLog Kowを有した物質の陽性結果のみを採用することにより,h-CLATが難水溶性物質を含む様々な物質の感作性を精度良く評価できる可能性が示唆された。
[引用文献] 1). Y. Nukada et al., 2012, Toxicol. In Vitro, 26, 1150-1160