日本毒性学会学術年会
第40回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-26
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一般演題 ポスター
亜セレン酸を曝露したHepG2細胞における新規セレン代謝物の同定
*阿南 弥寿美林 真理奈木村 桃子德本 真紀小椋 康光
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キーワード: セレン, シアン化合物, ICP-MS
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抄録
セレン(Se)は生体必須元素の一つであり、セレノシステインの形で様々なセレン酵素の活性中心として機能する。一方、栄養所要量の至適範囲は他の必須微量元素に比べ狭く、過剰な摂取は毒性を示す。亜セレン酸はSe栄養源となる化合物の一つで、臨床においてはミネラル補充の目的で輸液に添加される。亜セレン酸は生体内でセレニドに還元された後、セレン酵素の生合成に利用、あるいはセレン糖(SeSug)やトリメチルセレニウムイオン(TMSe)として排泄される。しかし、これらの代謝過程に関しては不明な点が多い。最近我々は、亜セレン酸を曝露した種々の培養細胞において特異的に検出されるSe代謝物を見出した。本研究ではヒト肝癌細胞株HepG2に亜セレン酸を曝露し、各種質量分析法によるSe代謝物のスペシエーションを行った。HPLC-ICP-MS分析の結果、タンパク質結合Seに加え、低分子量のSe代謝物が検出された。これはSeSugやTMSeの溶出位置と一致せず、新規Se代謝物であることが示唆された。この代謝物をHPLC-ESI-MSで分析したところ、負イオンモードにおいて、m/z=106と318付近にそれぞれSeを1原子と3原子含むイオンのSe同位体パターンが検出された。さらにESI-Q-TOF-MSを用いて解析した結果、Seを1原子含むイオンの精密な質量電荷比はm/z=105.920であった。以上の結果より、新規Se代謝物はセレノシアネート(SeCN-)であり、ESI-MS分析で得られたm/z=318のイオンはSeCN-の三量体であると推定された。従って、SeCN-生成が培養細胞におけるSe利用あるいは解毒に関与する代謝中間体である可能性が示唆された。
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© 2013 日本毒性学会
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