日本毒性学会学術年会
第40回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-27
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一般演題 ポスター
ナノ酸化亜鉛が、ブレオマイシンによって誘導されるマウスの肺線維症に与える影響
*呉 文亭
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抄録
【目的】ナノ酸化亜鉛は化粧品、電子部品の材料として使われている。最近のラットを用いた研究で、ナノ酸化亜鉛への曝露が肺の線維化を引き起こすことが報告されている。本研究ではブレオマイシンによって誘導されるマウスの肺線維化に対するナノ酸化亜鉛曝露の修飾作用を検討した。【方法】ミニポンプでBLM(100 mg/kg body weight)溶液を一週間連続皮下注入し、肺線維症マウスモデルを作製した。直径20 nmの酸化亜鉛ナノ粒子を超音波で分散させ、咽頭吸引法によりC57BL/6Jcl雌マウスに投与し、10日後に解剖を行った。【結果・考察】ナノ酸化亜鉛投与後、ブレオマイシン非投与マウスの体重は一時期に減少し、ナノ酸化亜鉛低濃度群では2日後、高濃度群では5日後に回復しはじめた。ブレオマイシン投与マウスでは、ナノ酸化亜鉛曝露群で体重が回復せず、高濃度暴露群では7匹中4匹が死亡した。ブレオマイシン非投与マウスとブレオマイシン投与マウスにおいて、高濃度曝露群の肺重量は酸化亜鉛非投与対照群および低濃度曝露群より増加した。肺組織像を観察したところ、肺線維化は酸化亜鉛非投与群では軽度かあるいは認められない程度であったのに対し、低濃度群では中程度、高濃度群では高度な線維化が認められた。気管支肺胞洗浄液中総細胞数および細胞分画の分析では、ブレオマイシン非投与、投与マウスともにナノ酸化亜鉛曝露群での肺胞への炎症細胞浸潤が明らかになった。ブレオマイシン非投与マウスでは、リンパ球がナノ酸化亜鉛濃度依存的に上昇し、リンパ球性炎症が認められた。ブレオマイシン投与マウスでは、好中球が酸化亜鉛非投与群および曝露群で全般的に増加し、リンパ球はナノ酸化亜鉛高濃度群のみで有意に上昇した。ナノ酸化亜鉛粒子の咽頭吸引曝露はブレオマイシン肺線維症マウスの肺線維化を促進し、ブレオマイシン非投与マウスでも肺線維症を引き起こすことが示唆された。
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© 2013 日本毒性学会
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