日本毒性学会学術年会
第40回日本毒性学会学術年会
セッションID: S5-2
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シンポジウム 5 抗がん剤の副作用対策の進歩
抗がん剤による末梢神経障害の対策研究
*江頭 伸昭川尻 雄大大石 了三
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抄録
タキサン系抗がん剤であるパクリタキセルや白金系抗がん剤であるオキサリプラチンは末梢神経障害を非常に発現しやすい。これらの抗がん剤による末梢神経障害は,患者のQOLを著しく低下させるだけでなく,がん化学療法の変更や中止に至ることから,臨床上大きな問題となっている。しかし,これらの抗がん剤による末梢神経障害の発現機序は明らかになっておらず,有効な予防・治療法も国内外において未だに確立されていないため,症状が強くなった場合には休薬,減量,他薬への切り替えが行われているのが現状である。そのため,基礎研究により,発現機序を解明し,それに基づいた有効な予防・治療法を早期に確立することが重要である。我々は末梢神経障害モデル動物を作製し,パクリタキセルが坐骨神経の軸索変性に伴い機械的アロディニアと冷感過敏を発現することを明らかにした。一方,オキサリプラチンは急性期より冷感過敏,その後遅発的に機械的アロディニアを起こし,冷感過敏の発現には,オキサレート基によるNa+チャネル/Ca2+チャネル/ nuclear factor of activated T-cell(NFAT)経路を介したtransient receptor potential melastatin 8(TRPM8)の発現増加が,機械的アロディニアの発現には,白金を含有する部分によるNMDA受容体NR2Bサブユニットを介したnitric oxide(NO)の合成酵素(NOS)やCa2+/calmodulin dependent protein kinase II(CaMKII)の活性化がそれぞれ関与していることを明らかにした。さらに,その発現機序に基づいた予防・治療候補薬をいくつか見出した。本シンポジウムでは我々のこれまでの研究成果を紹介する。
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© 2013 日本毒性学会
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