日本毒性学会学術年会
第40回日本毒性学会学術年会
セッションID: S6-3
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シンポジウム 6 医薬品等の環境影響評価に関する現状と今後の課題
日本でのヒト用医薬品の環境リスク評価について
*西村 哲治
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キーワード: 医薬品, 環境, リスク評価
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抄録
ヒト用医薬品の成分として用いられる化学物質は,医薬品が本来の目的により使用された後や,未使用の医薬品として廃棄されることにともない,環境中に排出された際には,医薬品成分としてもつ生理作用に加えて,化学物質としての化学的,物理的,生物学的な性状に由来して,生態系に影響をおよぼす可能性がある。とりわけ,新規に承認されるヒト用新有効成分含有医薬品の上市にともない,ヒト用新有効成分含有医薬品の有効成分原体又はプロドラッグの活性代謝物が有する化学物質としての化学的,物理的,生物学的な性状に由来する直接及び間接的に生じる環境に対する負荷を推定し,影響を評価して,人の健康と生態系へのリスク軽減を図ることは重要な課題である。これらのヒト用新有効成分含有医薬品の有効成分原体又はプロドラッグの活性代謝物に対する環境リスク評価は,段階的な評価手法を用いることを提案する。最初の段階(第I相)では,物理化学的性質を考慮した上で,ヒト用の医薬品の成分として用いられている物質による環境に対する曝露を,科学的な情報に基づき,想定値と設定値より予測環境濃度(PEC)表層水値を求める。PEC表層水値が一定値未満の場合には,環境リスクは考慮しなくともよいと判断して,リスク評価を終了する。PEC表層水値が一定値以上になる場合には次の段階の評価(第II相)を実施する。第II相では,環境における運命及び影響に関する情報を収集して評価を実施する。必要な場合は,藻類,甲殻類及び魚類を用いた短期慢性毒性を評価できる試験法により予測無影響濃度(PNEC)を求め,PNECに対するPEC表層水値の比を求める。PNECに対するPEC表層水値の比の値が1を超える場合は,PEC表層水値及びPNEC値を精緻化するため,追加試験を実施する。以上のような手順に従い,科学的な情報と手法に基づき,リスク評価を実施することを検討している。
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© 2013 日本毒性学会
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