日本毒性学会学術年会
第40回日本毒性学会学術年会
セッションID: S8-4
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シンポジウム 8 In vitroを用いた創薬安全性評価とその外挿性
人工染色体を用いた腎臓幹細胞からの臓器作製技術によるHTS毒性評価法の開発
*喜多村 真治
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抄録
現在,慢性腎臓病の患者は日本国民の8人に一人の割合で存在すると考えられており,新たな国民病と考えられてきている。また,腎臓は体内恒常性を維持する臓器であり,現在増え続ける化学物質なども腎臓から代謝されることが多い。そのような現代の環境下で,多種多様な化学物質に対し,腎臓毒性を的確にスクリーニングを行い評価する新たな手法の開発が求められている。我々はそのような腎臓に対し,成体腎臓幹細胞を使用した臓器形態再構築技術の開発を行ってきた。再生とは細胞・成長因子(再生因子)・足場(微小環境)の三要素からなると言われている。我々は,以前より成体腎臓の再生能に着目し,成体腎臓から自己複製能,多分化能,再生能をもった成体腎臓幹/前駆細胞様細胞(rKS56)の樹立を行い,再生治療の可能性を模索してきた(Kitamura S at el. FASEB J. 2005)。そのKS細胞に適正な成長因子,足場を与えることにより,腎臓構造の再構築開発を行い,三次元的な臓器再構築に成功した。その構造は糸球体から近位尿細管~ヘンレのループ,遠位尿細管,集合管といった腎臓構造最小構成単位であるネフロン構造の再構築を確認でき,腎臓構造に類似していた。本構造は,光顕レベル,電子顕微鏡レベル,染色レベルにおいて,腎臓構造類似であることが確認された。
本構造体を使用した新たな腎臓障害評価法の可能性が示唆され,現在,経済産業省 細胞プロジェクト(Tox-In Vitro)において,腎障害に対しハイスループットスクリーニング(HTS)が可能になる方法を検討している。KS細胞に鳥取大学との共同研究の元,人工染色体を用いた安定でかつ大容量の遺伝子導入を行い,障害をHTPで感知しうる評価法の開発を進めており,本セッションにおいて,その方向性などを発表したい。
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© 2013 日本毒性学会
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