抄録
2012年3月WHO/IPCSは,化学物質の免疫毒性のリスク評価に関して,各国で用いることのできる国際的にハーモナイズされたガイダンスを公表した(http://www.who.int/ipcs/methods/harmonization/areas/guidance_immunotoxicity.pdf)。このガイドラインは,化学物質に対する免疫毒性を,国際的に同意された方法を用いて評価し,これらの評価が適切なリスク管理に用いられることをめざしており,リスク評価を行う際の範例も記載されている。ガイダンス作成のため,2008年2月より,ヨーロッパ,米国EPA等の免疫毒性専門家を中心にワーキンググループが結成され,オランダ国立公衆衛生環境研究所(RIVM)でHenk van Loveren教授を座長として3回会議が開かれた。ガイダンス(1-7章)は,異なったタイプの免疫毒性が議論されており,1章:序論,2章:背景,3章:免疫毒性リスク評価のフレームワーク,4章:免疫抑制,5章:免疫促進,6章:感作性とアレルギー反応,7章:自己免疫誘発性,で構成されている。また,事例研究のためのモデル化合物として,鉛が4章の免疫抑制の事例として,ハロゲン化プラチナが6章の感作性の事例として,芳香剤シトラールが6章の(皮膚)感作性の事例として,HCBが5章の免疫促進の事例として,水銀とトリクロロエチレンが7章の自己免疫の事例として選ばれた。2010年11月から2か月間,パブリックコメント募集が行われ,ピアレビュー等を受けたのち,2012年3月,ガイダンスが最終化された。今後,新たな個別事例研究を行ってゆくうえでも重要なガイダンスと思われる。