日本毒性学会学術年会
第40回日本毒性学会学術年会
セッションID: S11-4
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シンポジウム 11 日本免疫毒性学会との合同シンポジウム「免疫毒性の最近の潮流」
アスベストの免疫毒性学的側面と病態への関与
*大槻 剛巳前田 恵武井 直子松崎 秀紀李 順姫西村 泰光
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抄録
アスベストによる発癌性については,含有する鉄による酸化ストレス,繊維状物質としての物理的なDNA損傷,そしてその他の発癌物質の吸着などが考えられる。一方,アスベストは珪酸(SiO2)の金属塩であり,珪酸曝露症例(珪肺症)にて自己免疫疾患が多く合併することや,その実験的検証から,アスベストもまた免疫毒性あるいは免疫担当細胞への作用が想定される。さらにアスベスト曝露者の合併症として悪性中皮腫などの発癌,初期曝露からの長期の潜伏期を考えると,抗腫瘍免疫の減衰などを惹起している可能性がある。我々は,アスベストの免疫担当細胞への影響ならびに抗腫瘍免疫との関連について,検討を加えている。細胞株モデル,健常人末梢血から採取した新鮮免疫担当細胞,あるいは曝露者(胸膜プラークや悪性中皮腫症例)の末梢血のリンパ球の解析を行ってきている。T細胞では,細胞株や,健常人由来細胞にて長期曝露によってアスベストが誘導するアポトーシスに抵抗性を獲得することが判明し,その機序として,Src-kinase,IL-10,STAT3,BCL-2の関与が判明した。さらにこれらの細胞では,抗腫瘍免疫にも重要なCXCR3発現やIFNγ産生の低下も認められた。制御性T細胞では細胞株モデルにて可用性因子であるIL-10,TGFβの産生過剰とともに細胞間接着による反応性T細胞の活性化抑制能の増強も確認された。制御性T細胞ではマスタージーンであるFoxP3を制御するFOXO1の発現低下と,それに伴う細胞周期の異調節なども観察されている。また,CD8+細胞障害性T細胞においても,実験系での分化誘導・増殖時のアスベスト曝露での抑制が判明した。一方,NK細胞においても,細胞内シグナリングの減弱とともに,機能発現活性化受容体の発現減弱が認められ, 特にNKp46分子については,アスベスト曝露症例においても,その殺細胞能との相関が認められた。さらなる検討とともに,曝露や担癌の指標あるいは予防的観点からのこれらの成果の応用も期待される。
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© 2013 日本毒性学会
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