日本毒性学会学術年会
第40回日本毒性学会学術年会
セッションID: O-12
会議情報

セッション3 新規物質(ナノマテリアル等)-3
多層カーボンナノチューブのラット肺ばく露に伴う炎症プロファイルと遺伝子発現特性
*酒々井 眞澄沼野 琢旬深町 勝巳二口 充津田 洋幸
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
多層カーボンナノチューブ(MWCNT)の平均長と肺障害性との関連,肺ばく露後の影響については不明な点が多い。ふるい板を使いMWCNTを分画化し,各分画での肺障害性および遺伝子発現への影響を検討した。濾過(FT分画, 平均長2.6 µm),非濾過(R分画, 高密度の為平均長測定不可),原液(W分画, 平均長4.2 µm)を雄F344ラットに2週間で計1.0 mg肺内噴霧し,短期試験では曝露後2週目,長期試験では52週目で剖検,肺にて組織学的検索および遺伝子発現を調べた。短期試験では炎症細胞浸潤および異物肉芽腫の形成を伴いマクロファージがMWCNTを貪食している像を認めた。FT分画での炎症面積は溶媒対象群および他の2分画と比較して有意に増加していた。長期試験では3分画曝露共にMWCNTを貪食したマクロファージ,炎症細胞浸潤を伴う異物肉芽組織,肺胞上皮細胞の過形成,肺胞間質の線維化および肥厚を認めた。腫瘍性病変は認めなかった。炎症面積,異物肉芽組織/線維化の数は溶媒対象群と比較して有意に増加した。分画間での差はなかった。曝露後65週目,2個体(いずれもR分画投与)で肺腫瘍発生を認めた。培養肺マクロファージにMWCNTを曝露しマイクロアレイにて発現増加した遺伝子としてCsf3,IL6,Ccl4およびCxcl2が抽出された。これらについて短期および長期試験での肺でのタンパク発現を調べた。短期試験では,Csf3およびIL6ではWとFT分画での発現が増加した。Cxcl2およびCcl4では3分画での発現が共に増加した。長期試験ではCxcl2において3分画での発現が共に増加した。以上より,平均長が2.6 mm以上のMWCNTは炎症を含む肺障害性がある。曝露後2週間および1年(52週)では腫瘍性病変は認められない。肺内曝露によりタンパク発現が誘導される遺伝子がある。
著者関連情報
© 2013 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top