抄録
【目的】皮膚感作性試験の動物実験代替法として、コラーゲンビトリゲル薄膜(CVM) チャンバーを培養担体として、ヒト単球株化細胞のTHP-1細胞を用いる方法(Vitrigel-SST法)の基礎的培養条件を検討、決定した後、これに基づいて皮膚感作性物質を評価した。【方法】CVMチャンバーにTHP-1細胞を1-5×105 cells播種して、RPMI-1640培地またはDMEM培地で2日間培養後、複数の濃度で試験物質を24時間暴露した。細胞生存率をCell counting kitで、培養上清中のサイトカイン量をELISAで測定した。【結果及び考察】強い感作性物質である2,4-dinitrochlorobenzene(DNCB)を用いてCVMチャンバー当たりの播種細胞数について検討を行った。5×105 cells播種した場合、暴露濃度依存的にIL-8産生量の有意な増加が認められたが、1×105 cells播種した場合は濃度依存的なIL-8産生量増加が見られなかった。次に培養液の検討を行った。RPMI-1640培地を用いた場合、DNCBの暴露濃度依存的にIL-8産生の有意な増加が認められた。一方、DMEM培地を用いた時は有意な増加が認められなかった。よって、THP-1細胞の培養液としてはRPMI-1640培地が適当であることがわかった。この条件下でのTHP-1細胞からのIL-8産生量は、CVMチャンバー上で培養したときの方がミリセル(PET膜)チャンバー及びプラスティックプレート上で培養したときよりも顕著に多かった。確立した条件に従って、皮膚感作性物質のNiSO4およびhexylcinnamic aldehydeを試験したところ、暴露濃度依存的にIL-8産生量が有意に増加した。これらの結果から、CVMはTHP-1細胞の培養基材として優れており、Vitrigel-SST法が、簡便かつ短期間で評価可能な皮膚感作性動物代替法として有望であることが示唆された。現在、感作性強度の異なる各種物質の試験を行っている。