日本毒性学会学術年会
第40回日本毒性学会学術年会
セッションID: O-30
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セッション6 代替法-1
Vitrigel-CPT法:コラーゲンビトリゲル膜チャンバーを用いたヒト角膜上皮‐無細胞性実質様培養モデルによる薬剤透過性試験
*山口 宏之竹澤 俊明
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抄録
[目的]従来、薬剤の角膜透過性試験にはウサギ等の実験動物が使用されてきたが、ヒトにおける薬剤の角膜透過性を外挿することは種差があるため容易ではない。一方、当研究室で開発したコラーゲンビトリゲル膜(以下CVM)は生体内の結合組織に匹敵する高密度コラーゲン線維より構成され、強度、透明性およびタンパク質透過性に優れている。最近、このCVMをプラスチック円筒の底面に接着した細胞培養用チャンバー(CVMチャンバー)を開発した。そこで本研究では、無細胞性の角膜実質と酷似しているCVMのチャンバー内にヒト角膜上皮細胞を三次元培養してヒト角膜上皮・無細胞性実質様培養モデルを構築し、薬剤透過性試験への応用を検討した。 [方法]最初に、CVMチャンバー(無細胞性実質)の物質透過性をCyanocobalaminおよびFITC-Dextran(FD)の透過速度を指標として評価した。次に、CVMチャンバー内でヒト角膜上皮由来細胞株(HCE-T)を2日間液相培養後、気相‐液相界面で4日間培養してヒト角膜上皮・無細胞性実質様培養モデルを構築した。このモデルの組織形態学的特徴を凍結切片を用いた各種染色により解析した。さらに、このモデルの物質透過性を、上皮バリア機能を傷害する塩化ベンザルコニウム(BAK)を曝露する前後でFD-4の透過速度を指標として測定した。 [結果と考察]CVMチャンバーは角膜実質と同様の分子半径依存的な物質透過性の変化を示した。また、培養モデルは、ヒト角膜と同等の約6層の上皮細胞層を有し、ZO-1、occludin、connexin-43、keratin K3、およびMUC1の発現を認めた。また、FD-4の透過係数はBAK曝露前後で0.6×10-6cm/secおよび2.4×10-6cm/secとなり、角膜と同様にBAKの曝露により上皮バリア機能が傷害され、角膜透過性が亢進することが分かった。以上の結果は、CVMチャンバー内に構築したヒト角膜上皮・無細胞性実質様培養モデルが薬剤透過性試験に有用であることを示唆する。現在、数種の点眼薬成分について透過性の評価を行っている。
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© 2013 日本毒性学会
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