抄録
【目的】食品添加物の防カビ剤であるイマザリルについて行動発達毒性試験を行い,マウスの次世代の行動発達に及ぼす影響の有無について検討する。
【方法】イマザリルを混餌法によりCD1マウスに0(対照群),0.0006%,0.0018%,0.0054%となるように調製してF0世代の雌に妊娠期及び授乳期に投与して,次世代マウスの行動発達に及ぼす影響について検討した。
【結果】F0世代の授乳期の摂餌量が用量依存的に減少した。F1世代の授乳期における仔マウスの体重は雌の低濃度投与群で増加した。また,授乳期間中の行動発達では雄仔マウスの4日齢及び7日齢の正向反射が用量依存的に抑制された。さらに雌仔マウスの7日齢の遊泳試験の方向が高濃度投与群で抑制され,14日齢の嗅覚性試行反応の経路が低・中濃度投与群で抑制された。F1世代の自発行動では移動時間が雄成体マウスの低濃度投与群で増加し,雌成体マウスでは低濃度投与群で抑制された。また,雄成体マウスの一回あたりの平均立ち上がり時間が低濃度投与群で抑制される時間帯があり,雌成体マウスの立ち上がり時間が中濃度投与群で促進される時間帯が見られた。
【まとめ】本実験においてイマザリルの妊娠期及び授乳期投与により,次世代マウスの行動発達に対していくつかの影響が観察された。本実験で用いられたイマザリルの用量はADI値を基に算出された(0.0018%がADI値の約100倍相当)ものであるが,実際の人の摂取量はADI値の1/100以下であるので,現実的なイマザリルの摂取量では人に対して影響を及ぼさないものと思われる。