日本毒性学会学術年会
第40回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-171
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一般演題 ポスター
二酸化チタンの気管内投与による生体影響:動物の系統の違いによる比較
*鈴木 正明加納 浩和妹尾 英樹近藤 ひとみ戸谷 忠雄齋藤 美佐江相磯 成敏福島 昭治
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抄録
[目的] 昨年,我々はナノ材料の有害性情報取得のための低コスト・簡便な有害性評価技術を構築するために二酸化チタン(TiO2:P25)を単回から複数回F344ラットに投与し,生体反応の差異を検討し,本学会に報告した。今回,我々は複数の系統のラットにTiO2を単回投与し,動物の系統の違いによる生体反応の差異について検討した。
[方法] 動物は,12週齢のF344(F344/DuCrlCrlj),Wistar Hannover(Crl:WI(Han)),Harlan SD(Hsd:SD)ラットの雄を用いた。いずれの系統もTiO2を10 mg/kg・BWの用量で気管内に1回投与する群,溶媒のみを投与する溶媒対照群を設けた。動物飼育期間中は動物の状態観察,体重測定を行った。TiO2の投与後3,28日目には気管支肺胞洗浄液(BALF)を採取し,総細胞数,細胞分類の測定及び生化学的検査を行い,28,91日目には血液学的検査,血液生化学的検査,臓器重量の測定と病理組織学的検査を行った。なお,BALFの検査を除き,無処置対照群も設けた。
[結果] TiO2の投与に起因する一般状態の変化は,いずれの系統にも認められなかった。体重は,各系統ともTiO2投与群と溶媒対照群の間に差はみられなかったが,投与後数日間はTiO2投与群には無処置対照群と比較して僅かな体重増加抑制傾向を示した。また,TiO2投与群と溶媒対照群には投与翌日に一過性の僅かな体重減少もみられた。BALF検査では,各系統とも3日目のTiO2投与群で炎症と細胞傷害を示すパラメーターの増加が認められたが,28日目ではこれらの値は減少し,ほとんどの項目で溶媒対照群と比較して差はなくなった。血液学的検査,血液生化学的検査では,いずれの系統でもTiO2投与の影響はほとんどみられなかった。肺重量は各系統とも28日目と91日目でTiO2投与群に高値が認められた。病理組織学的検査結果については,現在,データを解析中である。
(本研究は経済産業省からの委託研究「ナノ材料の安全・安心確保のための国際先導的安全性評価技術の開発」による研究成果である。)
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© 2013 日本毒性学会
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