日本毒性学会学術年会
第40回日本毒性学会学術年会
セッションID: SA1
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奨励賞
キノロン系抗菌薬オフロキサシンの幼若ラットにおける関節毒性発症機序に関する研究
*後藤 浩一
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抄録

キノロン系抗菌薬(キノロン薬)は,幼若動物に関節毒性を引き起こすことから,多くのキノロン薬で小児への投与は禁忌であり,その発症機序については未だ明らかではない。本研究では,関節毒性発症に関与する因子を見出すため,1)キノロン薬を投与した雄性幼若ラット(3週齢)の関節軟骨における遺伝子発現変動を網羅的に解析した。また,2) 関節毒性を示さないキノロン薬を投与した幼若ラットの関節軟骨について,見出された関節毒性と関連する遺伝子の発現を調べた。さらに,3)尾懸垂処置を施した幼若ラットを用いて,軟骨に対する荷重負荷の病変形成及び関節毒性関連遺伝子の発現に及ぼす影響を調べることで毒性発現機作を考察した。
1)キノロン薬ofloxacin(OFLX)の900 mg/kgを単回経口投与した幼若ラット大腿骨遠位関節軟骨について,GeneChipを用いた遺伝子発現解析を実施した。次に,OFLXの100,300,及び900 mg/kgを単回経口投与した幼若ラットの大腿骨遠位関節軟骨について,real-time RT-PCRにより,GeneChip解析で変動のあった遺伝子の発現を調べた。その結果,Dusp1,Tnfrsf12a,Ptgs2,Fos,Mt1a,Plaur,及びMmp3の用量依存的な発現の増加,並びにSstr1及びHas2の用量依存的な発現減少が認められた。さらに,Tnfrsf12a,Ptgs2,Plaur,及びMmp3遺伝子に対するin situ hybridizationを実施した結果,これら遺伝子は,軟骨病変部位周辺で発現が増加することが確認された。以上,OFLXの関節毒性には,軟骨細胞における細胞死,炎症反応,ストレス反応,及び蛋白溶解関連遺伝子の発現増加が重要な役割を果たしていることが示唆された。
2)新規キノロン薬DC-159aあるいはDX-619の300及び900 mg/kg/dayを7日間反復経口投与した幼若ラットでは,関節軟骨に組織変化は認められなかった。そこで,DC-159a及びDX-619の900 mg/kgを単回投与した幼若ラットの大腿骨遠位関節軟骨について,OFLXを投与した幼若ラット関節軟骨で変化が認められた9つの遺伝子発現を調べた。その結果,DC-159aあるいはDX-619を投与したラットでDusp1,Fos,及びMt1aの発現増加並びにSstr1及びHas2の発現減少がみられたが,Tnfrsf12a,Ptgs2,Plaur,及びMmp3には明らかな変化は認められなかった。以上,OFLXの関節毒性発症には,Tnfrsf12a,Ptgs2,Plaur,及びMmp3遺伝子の発現が重要であると考えられた。
3)キノロン薬関節毒性発症と軟骨に対する荷重負荷の関係を調べるため,OFLXの900 mg/kgを幼若ラットに単回経口投与し,投与後速やかに2,4,及び8時間後まで,尾懸垂処置を施した幼若ラットの大腿骨遠位関節軟骨について,投与8時間後に組織学的検査を実施するとともに,Tnfrsf12a,Ptgs2,Plaur,及びMmp3遺伝子の発現量を調べた。その結果,尾懸垂時間の延長に伴い通常飼育条件下で認められた関節軟骨の組織学的変化及び遺伝子発現が軽減する傾向が認められ,尾懸垂8時間処置ではこれらの変化は認められなかった。
以上,OFLXの関節毒性発症において,軟骨への荷重負荷及びTnfrsf12a,Ptgs2,Plaur,及びMmp3遺伝子発現量の増加が軟骨病変形成に重要であることが明らかとなった。

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© 2013 日本毒性学会
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