日本毒性学会学術年会
第41回日本毒性学会学術年会
セッションID: JH-5
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就職活動支援プログラム 安全性研究紹介
農薬の安全性評価研究
*松本 寛子
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抄録
 農薬は「体に悪い」「発がん作用があるのでは?」というイメージで捉えられることがあるが、総合的な評価により安全性が担保された化合物のみが新たな農薬として世の中へ送り出されている。この総合的な評価とは、消費者に対する安全性の確保だけではなく、農薬散布時から対象外の作物や環境中(土壌、大気、河川等)への拡散・移行、最終的に代謝・分解されるまでに関わる生物、環境を含む生態系の安全を確保するものである。
 ヒトの安全性に関する評価試験は、農薬の製造者・使用者に対するものと農作物の消費者に対するものとに大別される。前者においては、短期間に高濃度の農薬に暴露される可能性を考慮した急性毒性試験や眼や皮膚に対する刺激性、繰り返し使用を想定した亜急性毒性等である。後者においては、農作物中に残留する微量の農薬を長期にわたって摂取する可能性を想定した慢性/発がん毒性等の試験が挙げられる。その他にも、DNAへの傷害性を評価する遺伝毒性試験、妊婦や次世代に対する影響を評価する生殖発生毒性試験、免疫系や神経系に対する毒性試験等があり、必須とされている試験だけでも30程度にのぼる。これらの成績に基づき、短期間に高濃度の農薬へ暴露された場合でも健康に悪影響を示さない量や農作物に残留した農薬を一生涯摂取し続けたとしても本人および次世代へ影響しない1日摂取許容量など安全性を保証するための基準が農薬毎に設定される。
近年、農薬に対する社会的な要請が高まり、新たな農薬には低毒性、低残留性、低環境負荷などが求められている。そのために我々はより良い新剤開発に貢献するべく、組織・細胞レベルにおける毒性学的な作用機序、環境中での化合物の分解要因解明等、様々にアプローチしている。本演題では農薬の安全性研究の内容を紹介し、就職活動支援プログラムの一環としたい。
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© 2014 日本毒性学会
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