日本毒性学会学術年会
第41回日本毒性学会学術年会
セッションID: O-33
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一般演題 口演
ラット膝関節内における多層カーボンナノチューブの生体応答
野村 博紀*羽二生 久夫高梨 誠司小林 伸輔青木 薫丸山 佳与薄井 雄企加藤 博之齋藤 直人
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抄録
【目的】我々は超高分子量ポリエチレン(PE)の強度及び耐久性,耐摩耗性を向上させることを目的に強化材として多層カーボンナノチューブ(MWCNT)を複合したPE/CNTコンポジットの開発を行っている.今回,関節内にMWCNTが溶出した場合を想定した動物実験と細胞実験を行った.【方法】動物実験はWisterラット(10週齢,♂)の膝関節内にMWCNT (MWNT-7;保土谷化学)を2種類の投与量(0.2mg;CNT-H & 0.02mg;CNT-L)で注射した.注射後2日,1,4,12週の時点での組織評価を行った.Sham群として生理食塩水,negative control群としてホソカワミクロンのカーボンブラック(0.2mg;HCB)を用いた.細胞実験ではヒト正常滑膜線維芽細胞(HFLS)にHCBとMWCNTを24時間暴露した時の細胞毒性とサイトカイン分泌を調べた.【結果】膝関節内注射後のHE染色による組織評価では2日の時点ではsham群以外の全ての群において投与マテリアルの滑膜細胞表面への付着が認められた.1週間後MWCNT群は濃度に関係なく滑膜内に取り込まれ,周辺は染色性の強い異形細胞に囲まれていたのに対し,HCB群では1週間経過時でも滑膜細胞表面に付着したままであった.4週の時点では全ての群で滑膜内への取り込みが認められ,12週の時点でもほとんど変わらなかった.HFLSにおける細胞毒性試験ではMWCNTは濃度依存的に細胞毒性が増加したが,炎症反応に関しては有意に増加したサイトカインはなかった.【考察・結語】動物・細胞実験からCNT-HはHCBと比較し,膝関節滑膜内への取り込み時期や炎症反応が若干強く出る傾向があったが,4週でほぼ収束しており,コンポジットに含まれる量やその磨耗予測から毒性はほとんどないと考えられる.
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© 2014 日本毒性学会
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