抄録
肺に対する化学物質の毒性を評価する際に、気管支肺胞洗浄液(BALF)ならびに胸腔洗浄液(PLF)の検査が有用であるかをラットの気管内投与法を用いて検討した。ラットの麻酔に多用されるジエチルエーテルならびにイソフルランについて肺に対する影響を検討したところ、BALF検査項目は両者間で本質的な差はみられなかった。次に、気管内投与試験の陰性対照として用いられるリン酸緩衝生理食塩液ならびに注射用蒸留水の2 ml/kgをそれぞれラットに気管内投与して、投与後翌日に肺に対する影響を検討したところ、BALF検査項目は両者間で差はみられなかった。PLF検査の有用性を検討するために、ラットにリン酸緩衝生理食塩液を気管内投与し、投与後1日および7日にPLFの細胞学的検査をしたところ、BALFの結果と類似していた。陽性対照として塩化亜鉛の0.9 mg/kgを気管内投与して、投与後7日にBALF検査したところ、炎症性の変化が認められた。以上のことから、ラット気管内投与試験においてBALF検査およびPLF検査は有用であることが確認された。