日本毒性学会学術年会
第41回日本毒性学会学術年会
セッションID: O-5
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一般演題 口演
アスベストのマウスにおける催奇形性について
*藤谷 知子安藤 弘久保 喜一猪又 明子小縣 昭夫中江 大広瀬 明彦西村 哲治
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抄録
<背景と目的>繊維状外来異物である多層カーボンナノチューブが催奇形性を有することから、胎盤通過や胎仔(児)への移行が確認されているアスベストについても、催奇形性の有無の確認が必要と考えられた。<実験>クロシドライト、クリソタイルあるいはアモサイトを2%CMCNa/PBSに懸濁し、妊娠9日のCD-1マウスに4あるいは40mg/kg体重を腹腔内投与し、妊娠18日に母体の白血球検査と妊娠に関する指標および胎仔を検査した。<結果>3種のアスベストの4mg/kg体重の投与では、調べた指標に何ら有意な変化は見られなかった。しかし、40mg/kg体重の投与では、クロシドライト投与群で着床数中の生存胎仔%の有意な低下が、クリソタイルおよびアモサイト投与群で早期死胚を有する母体の頻度の有意な上昇が見られ、アモサイト投与群で四肢減形成を主とする外表奇形の有意な発現が、また、クロシドライトおよびクリソタイル投与群で脊椎の癒合を主とする骨格奇形の有意な発現が見られた。母体では、クロシドライトおよびアモサイト投与群で、総白血球数の有意な上昇、特に好中球数の有意な増加と、脾臓重量の有意な増加が見られた。<考察>3種のアスベストの40mg/kg体重の腹腔内投与が、マウスにおいて催奇形性を有することが明らかとなった。アスベスト投与によって発現した奇形の種類および母体の白血球数や脾臓重量の増加は、多層カーボンナノチューブで見られたと同様の変化であり、両者の奇形発現の作用機序が似通っている可能性が示唆された。アスベストで奇形発現の見られた投与量は、多層カーボンナノチューブで奇形発現の見られた投与量の10倍であったが、ラットにおける中皮腫発現についても、多層カーボンナノチューブの投与量とアスベストの投与量に同様の乖離が見られ、これらの差異は生体に悪影響を及ぼす長さの繊維をどれだけ含んでいるかが関与していると考えられている。
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© 2014 日本毒性学会
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