日本毒性学会学術年会
第41回日本毒性学会学術年会
セッションID: O-9
会議情報

一般演題 口演
鰭脚類におけるグルクロン酸抱合酵素の解析
*筧 麻友池中 良徳中山 翔太水川 葉月渡邊 研右坂本 健太郎和田 昭彦服部 薫田辺 信介野見山 桂石塚 真由美
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【目的】グルクロン酸抱合酵素(UGT)は、異物代謝の第Ⅱ相抱合反応を担い、各動物の化学物質感受性決定に関与することが報告されている。食肉目ネコ亜目(Feliformia)では環境化学物質や薬物等の代謝に関与するUGT1A6の偽遺伝子化が報告されており、この偽遺伝子化によりアセトアミノフェン等の薬物の毒性作用が強く表れることが知られている。一方、食肉目に属する鰭脚類(Pennipedia)では、PCB、DDTなどの残留性有機汚染物質の高濃度蓄積が報告されているが、感受性に関与するUGTについての研究がほとんど行われていない。そこで、鰭脚類を中心とした食肉目において、UGTの機能解析及び系統解析を行い、種差を明らかにすることを目的とした。
【方法】食肉目に属するネコ(Felis catus)、イヌ(Canis familiaris)、鰭脚類であるトド(Eumetopias jubatus)、キタオットセイ(Callorhinus ursinus)、カスピカイアザラシ(Phoca caspica)及び対照としてラット(Rattus norvegicus)の肝臓ミクロソームを調整した。この肝臓ミクロソームを用いて、1-ヒドロキシピレンを基質としてUGT活性を測定した。さらに食肉目UGT1A遺伝子について、他の哺乳類と比較し、系統解析を行った。
【結果及び考察】1-ヒドロキシピレンを基質として用いたところ、イヌはラットと同程度のUGT活性を示したが、鰭脚類3種およびネコのUGT活性はラットの3分の1以下だった。また、UGT1A遺伝子は一般に2-10程度のホモログが近接して染色体上に存在しているが、系統解析及びシンテニー解析より、食肉目は齧歯目に比べUGT1A領域が短くUGT1A分子種数が少ないことが確認された。さらに、トドおよびキタオットセイでは、UGT1A6のエクソン1領域に2塩基挿入によるストップコドンが生じ、偽遺伝子化していることが明らかになった。以上の結果より、鰭脚類は、UGTによる異物代謝能が低く、環境化学物質に対する感受性が高い可能性が考えられた。
著者関連情報
© 2014 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top