抄録
【目的】第40回日本毒性学会学術年会において、HepaRG細胞を使用したin vitro肝細胞毒性試験は、肝障害リスクを探索的に予測する評価系として有用であることを報告した。本評価系は、医薬品の研究開発において候補化合物の優先順位付け及びin vivo毒性試験で肝障害が認められた場合のメカニズム解析への活用が期待できる。今回、抗真菌剤を使用して本評価系で化合物の優先順位付けが可能か否かについて検討した。
【方法】試験物質はケトコナゾール、イトラコナゾール、フルコナゾール及びテルビナフィン塩酸塩を使用した。HepaRG細胞に試験物質を24時間処理後、主要な肝障害機序を反映する6種類のパラメータ(細胞生存率、グルタチオン量、Caspase 3/7活性、脂肪蓄積量、LDH漏出量、アルブミン分泌量)について測定した。
【結果及び考察】HepaRG細胞では、肝細胞毒性はケトコナゾールで最も強く、次いでイトラコナゾール、テルビナフィン塩酸塩、フルコナゾールの順であった。また、添付文書(FDA)で薬剤性肝障害リスクが黒枠警告のケトコナゾールでは、本評価系で脂肪蓄積を除く5つのパラメータで明らかな変動が認められ、強い毒性を示した。一方、ヒト臨床では肝障害はケトコナゾールで最も発現率が高く、次いでイトラコナゾール、テルビナフィン塩酸塩、フルコナゾールの順であり、本評価系による化合物の順位付けと同様であった。したがって、医薬品の研究開発において、本評価系は化合物の優先順位付けとして活用が可能と考えられた。本評価系を創薬早期に活用し、薬剤性肝障害リスクが低い化合物を選択することにより、医薬品の研究開発の成功率が上がることが期待できる。