抄録
【緒言】金属キレート剤であるエチレンジアミン四酢酸(EDTA)は,臨床において急性高カルシウム血症の治療に用いられている。その類縁物質であるグリコールエーテルジアミン四酢酸(EGTA)は生体内において,EDTAと比べカルシウムとのキレートを形成しやすいことが知られている。そこで我々は、EGTAを雄性ラットに1ヵ月間反復投与して,消化管でのカルシウム吸収抑制に伴うカルシウム欠乏状態を作り出し,その影響を検討した。また,給餌条件の違いによる毒性発現の差異についても詳細な検討を行ったので報告する。
【方法】通常給餌及び時間制限給餌経口投与: EGTAを0及び2000 mg/kgの用量で1ヵ月間反復経口投与した。混餌投与:EGTAを0,2及び5%の用量で1ヵ月間反復投与した。投与期間中,一般状態観察,体重・摂餌量測定,尿検査及び血液生化学的検査を経日的に実施した。また,投与終了時に剖検,臓器重量測定及び病理組織学的検査を実施した。
【結果】全ての給餌条件でEGTA投与群では尿中カルシウム排泄量が減少しており,無機リン排泄量が著増していたため,カルシウム欠乏状態にあると考えられた。また,時間制限給餌経口投与及び混餌投与により,カルシウム欠乏に起因すると考えられる種々の変化が認められたが,通常給餌経口投与では明らかな毒性は見られなかった。本学会では,全身諸臓器の病理学的検査結果も交え,カルシウム欠乏により発現する毒性に関して総括したい。